日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
原著
口腔顔面痛患者に対する超音波エコーガイド下星状神経節ブロックの効果・合併症の検討
大島 優坂本 英治横山 武志
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2018 年 46 巻 2 号 p. 57-61

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抄録

【要約】 頭頸部の慢性疼痛治療に星状神経節ブロック (SGB) がしばしば用いられる. SGBにはまれではあるが致死的合併症もある. 安全性を高めるために, 近年, 超音波エコーガイド下のSGB (US-SGB) が実施されている. 今回, 従来どおりの盲目的SGB (Blind-SGB) とUS-SGBとで, その奏効性および合併症の出現について比較検討した.

 方法 : 当院で2013年9月から2017年12月までに施行されたSGB症例を対象とした. 電子カルテから, 年齢, 性別に加えて, 効果発現, さらにSGB施行時の肩部への響き, 嗄声, 血管穿刺, 腕神経叢ブロックといった合併症の有無の情報を抽出して, Blind-SGB群とUS-SGB群とで比較した. さらにUS-SGB群では局所麻酔薬 (局麻薬) の広がる部位が頸長筋下に確認できた場合 (ULC群) と, できなかった場合 (non-ULC群) とで比較した. 数量データはKruskal-Wallis検定で, カテゴリーデータはカイ二乗検定を行い, p値5%以下を有意とした.

 結果 : 対象期間内にBlind-SGB群79症例, US-SGB群69症例の情報を抽出した. ULC群が48症例で, non-ULC群が21症例であった. 患者背景に有意な差はなかった. Blind-SGB群の効果発現は83.5%, US-SGB群は82.6%で, 有意な差は認めなかったが, ULC群の効果発現が97.9%に対して, non-ULC群では47.6%と有意に低かった. 合併症では血管穿刺の頻度に有意な差はなかったが, 嗄声はUS-SGB群がBlind-SGB群に対して有意に少なかった.

 考察 : US-SGBでは血管, 神経と針先を確認しながら実施できる. さらに頸部交感神経幹がある頸長筋下に局麻薬の広がりを確認できた症例では高い確率で効果が認められた. US-SGBでは効果が高まるだけでなく, 合併症を軽減できている. 本研究からUS-SGBは, 頸長筋下に局麻薬を注入できれば, より安全で効果の高い治療を患者に提供できることが示唆された.

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