日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
原著
歯科治療に対する恐怖感と歯科麻酔の認知度および潜在需要 : 日本語版Modified Dental Anxiety Scaleを用いて
小川 美香塩次 雄史金子 泰久西田 幸紀谷口 省吾
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2020 年 48 巻 2 号 p. 41-50

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抄録

【要約】 歯科恐怖症は静脈内鎮静法の良い適応とされるが, 歯科麻酔がどの程度一般人に認知され需要があるかは不明である. 本研究は, 本邦の一般人における歯科治療に対する恐怖感 (歯科恐怖) の程度を諸外国と比較し, さらに歯科麻酔の認知度および潜在需要を明らかにすることを目的とし, 質問紙調査を行った. 20~79歳のインターネットモニターを対象とし, 歯科恐怖の強さをModified Dental Anxiety Scale (MDAS) で評価し, 19点以上を程度の強い歯科恐怖とした. その他に, 歯科麻酔に関する用語の認知度, 全身麻酔法および静脈内鎮静法下歯科治療の需要, 社会的属性などを評価した. 回答者は400名で, 程度の強い歯科恐怖をもつ者は45名 (11.3%) であった. 回答者の42.0%が 「歯科麻酔科医」 を, 47.0%が 「吸入鎮静法」 を, 64.0%が 「静脈内鎮静法」 を 「全く知らない」 と回答した. 歯科恐怖が強い群は弱い群に比べて歯科麻酔科医の認知度が有意に低かった. 全身麻酔下歯科治療は14.3%, 静脈内鎮静法下歯科治療は44.0%に需要があった. 多変量解析の結果, 社会的属性の影響を除いても歯科恐怖の強さは全身麻酔および静脈麻酔下歯科治療の需要に有意に関連していた. 本邦において歯科治療に対し強い恐怖感をもつ者は諸外国と同程度に存在し, 歯科麻酔の潜在的な需要は高いが認知度は低い可能性が示唆された. 潜在的な歯科恐怖症患者に安心な歯科治療を提供するため, 「歯科麻酔」 の啓発が必要と考えられた.

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© 2020 一般社団法人日本歯科麻酔学会
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