2022 年 1 巻 1 号 p. 17-21
大学発シーズを実用化につなげるためには,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの公的資金が欠かせない。AMEDの研究費を獲得するためには,設立に携わった文部科学省,経済産業省,厚生労働省に加えて,新たに参画した総務省の特徴を理解する必要がある。著者らは,公的な支援を受けて「CPCモンモリロナイト」と「リン酸化プルラン」という2つの「ものづくり事業」に取り組んでいる。CPCモンモリロナイトは,殺菌剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)を食品添加物であるモンモリロナイトの層間に封入した材料で,歯科材料に添加することにより抗菌性を付与することができる。リン酸化プルランは,歯質接着理論を基に分子設計された生体硬組織への接着,粘着性を有する生体吸収性材料である。体内埋植用材料として用いられているコラーゲンやヒアルロン酸に替わる新素材として期待されている。本稿では,これらの具体例を通して,大型研究費の特徴と進め方を解説する。