抄録
本研究の目的は鹿妻穴堰土地改良区水源林を対象としてその戦後期(1946〜2005年)の経営展開を解明することである。とくに土地改良区財政と水源林との経済的関係の変化,水源林の森林経営計画の変化に着目して時期区分を軸とした歴史的実証分析を行った。結果として次の4期に区分した。第1期(1946〜1956年):天然林択伐による土地改良区一般会計への大幅な貢献期,第II期(1957〜1981年):造林特別会計の確立と拡大造林による一般会計への寄与期,第III期(1982〜1994年):造林特別会計の赤字転落と造林事業量の減少期,第IV期(1995〜2005年):一般会計からの繰入による人工林の再整備期である。とくに第IV期の動向は関東地方の水道事業体水源林と比較しても積極的に人工林整備を行っている例として評価できる。