森林計画学会誌
Online ISSN : 2189-8308
Print ISSN : 0917-2017
森林計画学会誌 第50巻 第1号
中国内モンゴルのエジナ河・居延三角州における胡楊(Populus euphratica)林の現状と再生適地の判定
Wang Siqinbilige粟屋 善雄
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 50 巻 1 号 p. 15-26

詳細
抄録

中国内モンゴル自治区のエジナ河・居延三角州では,1940年代から1980年代初頭にかけて胡楊(コヨウ,Populus euphratica)などが軍用の建材や燃料として大規模に伐採され,胡楊は絶滅危惧種に指定された。そこで,現地調査と1977年,1990年,2000年および2010年のランドサットデータの判読結果に基づいて,胡楊の分布と回復の傾向を判定し,再生適地を明らかにすることを目的とした。GIS での解析によると,2010年までに人為的な撹乱はほぼ終わって植生の回復が始まり,一部のエリアでは胡楊への遷移が進んでいた。バッファリング解析では,胡楊が河川沿いの紅柳(コウリュウ,Tamarix ramosissima)林へ広がるのに,最低450年を要すると予想された。約40年間で大面積の森林が伐採されたが,回復には10倍以上の年月を要することになる。しかし,胡楊と他の樹種の混植や根切りが胡楊の更新を促すことが知られている。このため,胡楊の回復が見込める川沿いの紅柳林へ効果的に胡楊を混植し,拡大が止まっている胡楊林では根切りで更新を促進して再生に要する期間を短縮できると考えられた。

著者関連情報
© 2016 森林計画学会
前の記事 次の記事
feedback
Top