2018 年 51 巻 2 号 p. 69-79
本研究では作業システムと採材方針の違いによるスギ人工林の収益の変化を示した。対象地は山形県鶴岡市旧温海町の民有林とした。高単価な材の生産を目指し,集材機による架線系作業システムを用いる従来型,並材を大量生産し,高性能林業機械による車両系作業システムを用いる効率型の2つの方針を設定した。地際からA材が採材できる高さと全立木に占める根曲がり木の割合を変化させ,各方針に対して地位級別,伐期齢別に haあたり年当たり森林純収益を算出した。従来型と効率型の年当たり森林純収益を比較すると,ほぼすべての条件で効率型が従来型を上回った。A材の採材を並材に絞ったとしてもほとんどの条件下で効率型のほうが有利であることが示された。したがって,仮想的な林分で見た場合,高密度路網と高性能林業機械の導入によって従来型から効率型へ経営方針を変えたことは収益面から見て合理的であったといえる。