森林計画学会誌
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論文
横浜市有道志水源林における事業展開と課題:1990年代以降の経営方針の転換に着目して
山口 広子 興梠 克久
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2022 年 56 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

山口広子・興梠克久:横浜市有道志水源林における事業展開と課題:1990年代以降の経営方針の転換に着目して,森林計画誌56:1~11,2022 近年,森林のもつ公益的機能がますます重視されている。本研究で扱う横浜市有道志水源林は,1919年に経営を開始し,1991年に水源涵養機能に留意した木材生産を主目的とする経営方針から,木材生産を従目的化し水源涵養機能の発揮を最優先させるよう経営方針を転換した。本研究では,道志水源林における経営方針の転換が施業タイプ分類,施業内容,森林作業の担い手,都市と山村の交流等にもたらした変化を明らかにすることを目的とし,文献調査と聞き取り調査を行った。タイプ区分の上では「安定的な天然林」により近づける方向に変化してきたこと,転換当初は行われていた枝打ちや路網整備が中止され,施業面からも木材生産が従目的化してきたことが明らかになった。方針転換後,人工林の間伐により広葉樹の生育が誘導されてきたが,経営計画に基づいた施業の結果としてどの程度「安定的な天然林」に近づいているかが不明瞭なため,植生調査等をもとにした事業評価が必要であると考えられる。

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