2022 年 41 巻 p. 55-68
要保護児童の里親委託促進が強く求められる今日、委託率のさらなる上昇に伴い、今後実親家庭への復帰が見込まれる子どもを里親に委託するケースは増加していくと予測される。家族再統合に向けた里親と実親の共同養育者たる関係構築は、今日の社会的養護における喫緊の課題であるといえる。
本研究では、実親支援の実践経験がある10名の里親に対するインタビュー調査を通して、実親と関わった経験が里親にどのような意識とその変容をもたらしてきたのかを考察した。
里親は、実親との出会い当初は、実親に対する否定的感情を持っていたが、直接的な関わりの中で実親の頑張りを認識するようになり、肯定的感情への変化を通じて実親との協働意識が芽生えていた。そして、親子関係再構築支援の萌芽から、実親支援が行われていく。そこでは実親の心情に配慮しながらも、抱え込まないことを意識していた。関わりの中で生じる実親に対する否定的な思考に対しては、ポジティブな翻訳によって里親の認識を修正していた。実親支援においては、実親の揺らぎなどに振り回されないように「線引き」するなどといった、里親の技が多く活用されていた。実親からの否定などに起因する里親の葛藤や、実親支援におけるリスクに対処しつつ、実親からの信頼獲得や仲間内の絆、里親同士の連携などのモチベーションの維持要因があることで、実親を支援するという役割意識が維持されていた。
この研究によって、里親が実親の支援という役割を維持できれば、里親と実親による共同養育を実現する可能性が高まることが示唆された。