The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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ORIGINAL ARTICLE
Preoperative Evaluation and Management of Accessory Hepatic Ducts for Cholecystectomy
Saori YabeTakahito NakagawaKazuyoshi OkumuraTatsushi ShimokuniMakoto NishikawaMasahiro Takahashi
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2020 Volume 53 Issue 5 Pages 399-408

Details
Abstract

目的:副肝管は術前診断に至らないことも多く,胆囊摘出術の際に胆道損傷の頻度が高いとされる.当院の胆囊摘出例を検討した.方法:2008~2018年に当科で施行した胆囊摘出例482例を対象とし,副肝管を認めた36例(7.5%)について術前胆道評価,術式,胆道損傷の有無を正常解剖例と比較検討した.結果:副肝管の形態は久次らの副肝管分類でI型が2例,II型が6例,III型が26例,IV型が0例,V型2例で,副肝管の支配領域は後区域が80%を占めた.術前胆道評価での副肝管の診断率は,magnetic resonance cholangiograph(MRC)で89.3%(28例中25例),CT胆道造影検査(drip infusion cholangiographic-CT;以下,DIC-CTと略記)で100%(15例中15例)であった.手術は7例(19.4%)に開腹胆囊摘出術を,29例(80.6%)で腹腔鏡下手術を選択したが,3例(10.3%)は開腹術へ移行となり,正常解剖例と比較して開腹手術の選択率は高い傾向にあったが,開腹移行の頻度に差はなかった.副肝管症例では術中胆道損傷の発症を認めず,術後経過で副肝管の閉塞や遺残結石は生じなかった.結語:副肝管症例の手術では,術前胆道走行評価の徹底および術中胆道造影の施行や手術手技の工夫により,鏡視下手術であっても安全に施行可能であると考える.

Translated Abstract

Purpose: The aim of this study was to assess the diagnostic accuracy of preoperative images in detecting accessory hepatic ducts and frequency of bile duct injuries. Materials and Methods: A total of 482 patients were treated consecutively with cholecystectomy for gallbladder disease during a recent 10-year period. In this case, 36 patients (7.5%) were given a diagnosis of accessory hepatic ducts, and we reviewed their preoperative evaluation of hepatic ducts, operative procedure and the rate of hepatic duct injuries and compared them with normal anatomy groups. Results: Type I, II, III, IV, and V accessory hepatic ducts were detected in 2, 6, 26, 0, and 2 patients, respectively, based on the Hisatsugu classification, draining posterior segments in up to 80% of cases. The accuracy for detecting accessory hepatic ducts was 89.3% (25 out of 28 patients) for magnetic resonance cholangiograph (MRC) and 100% (15 patients) for drip infusion cholangiographic-CT (DIC-CT), respectively. In accessory hepatic duct groups, laparotomy was performed in 7 patients (19.4%), laparoscopy in 29 patients (80.6%), with conversion to laparotomy in 3 patients (10.3%). Laparotomy was performed more in accessory hepatic duct groups than normal anatomy groups, but there was no significant difference in the conversion rate to laparotomy. None of the patients with accessory hepatic ducts suffered bile duct injuries, postoperative obstructions of hepatic ducts or remnant gallbladder stones. Conclusion: A detailed evaluation of hepatic ducts on preoperative precise imaging studies was necessary to perform safe laparoscopic cholecystectomy, and surgical techniques such as intraoperative cholangiography could be considered in operations for accessory hepatic duct groups.

はじめに

副肝管は古くから報告のある肝外胆管走行異常の1形態である1).異所肝管という呼称もあり混同して用いられることも多く,その定義は不明瞭であるが,臨床的には区域以下の支配胆管で肝外を走行し,肝外胆管,胆囊や胆囊管に直接流入する胆道走行の破格とされる2)3).頻度は0.8~31%と少なくないが4)5),他の胆道走行異常と同様に,正常解剖例と比較して手術,特に胆囊摘出術の際に胆道損傷を来しやすいとの報告もある6).今回,当科で施行した胆囊摘出例482例を対象に,副肝管を有する症例の術前胆道走行評価,手術治療および胆道損傷発症の有無,長期予後について正常解剖例と比較し,考察を加え報告する.

方法

2008年4月から2018年3月まで,当科で施行した胆囊摘出術495例のうち術前胆道評価としてendoscopic retrograde cholangiograph(以下,ERCと略記),magnetic resonance cholangiograph(以下,MRCと略記),CT胆道造影検査(drip infusion cholangiographic-CT;以下,DIC-CTと略記)のいずれかが行われている482例を対象とした.術前の胆道走行評価はMRCを原則とし,術前に胆道ドレナージや総胆管結石治療のためERCを施行した症例は,ERCも参考にした.緊急手術症例やMRCが施行できない症例,MRCで胆道走行が不明瞭であったり胆道走行異常を認めた症例ではDIC-CTによる胆道走行評価を追加した.胆道走行異常の形態については久次ら7)の副肝管分類を用いた.すなわち,区域以下の支配肝領域を有する胆管で,肝外を走行し,肝外胆管や胆囊,胆囊管に合流する胆管を副肝管と定義し,肝外胆管,胆囊および胆囊管との合流部位により五つの胆道走行形態に分類した.副肝管を有する症例をA群とし,それ以外を対照のN群とした.患者の背景因子として性別,年齢,原疾患,術前胆道走行評価法を抽出し,手術治療,胆道損傷の発症および予後について検討した.胆囊摘出術の術式選択は,院内の術前検討会で検討するが,最終的判断は執刀医が行っている.副肝管の有無にかかわらず,高度炎症症例では開腹手術を選択した.中等度炎症例・副肝管などの解剖学的変異を伴うものを腹腔鏡下で開始するか,最初から開腹手術で開始するかは,執刀医のそれまでの経験や腹腔鏡手術の技術に基づいて決定している.初期の症例は開腹手術の経験が豊富な術者による手術が多く,III型の症例以外では術中胆道造影を施行するため,胆囊穿刺の手技など経験数の多い開腹手術を選択した.後期の症例では,I型,III型の症例は鏡視下手術を選択し,V型の症例は開腹手術を選択した.I型,V型の症例については開腹手術か鏡視下手術かにかかわらず,全例で術中胆道造影を施行した.術中胆道造影は,副肝管の損傷を予防するために胆囊管切開による胆道造影チューブの挿入は避け,胆囊頸部あるいは体部に小切開を加えてチューブを挿入し行った.鏡視下手術では,以下の方法を用いた.右肋弓下より経皮的に胆囊底部を穿刺し,ベニューラ針または中心静脈カテーテルを胆囊内に留置した.透視はCアーム装置を用い,透視画像と鏡視下画像をみながら,副肝管と胆囊管の位置関係を確認して胆囊管のクリッピングを行った.開腹手術の選択率および開腹術への移行率については,χ2検定を用いてA群とN群の統計学的有意差の有無を検討し,P<0.05を 統計的有意とした.

考察における参考文献は,医学中央雑誌(1964年~2019年3月)およびPubMed(1950年~2018年3月)で「副肝管」,「異所肝管」,「accessory hepatic duct」,「aberrant hepatic duct」をキーワードとして検索した.

結果

1. 患者背景

全体で7.5%(482例中36例)に副肝管を認めた.患者背景は男女比17:19で,平均年齢は57.3歳(32~81歳)であった(Table 1).原疾患として胆囊結石症が35例,胆囊腺筋腫症が1例で,胆囊結石症のうち胆囊ポリープを合併している症例が2例,胆囊癌を合併しているものが1例あった.胆囊結石症の症例では全例で慢性胆囊炎を合併しており,急性胆囊炎に対する緊急手術症例は認めなかった.

Table 1  Clinical characteristics of 482 patients who underwent cholecystectomy and comparison of operative outcomes of cholecystectomy between the normal anatomy and accessory hepatic duct groups
Normal anatomy (n=446) (%) Accessory hepatic duct (n=36) (%)
Age (years) 63 [24–85] 57 [32–81]
Sex (male/female) 237/209 (53/47) 17/19 (47/53)
Operative procedure
Open cholecystectomy 45 (10) 7 (19)
Laparoscopic cholecystectomy 401 (90) 29 (81) NS (P=0.0818)
Pure laparoscopic surgery 374 (93) 26 (90)
Conversion to laparotomy 27 (7) 3 (10) NS (P=0.4613)

2. 胆道走行異常の評価および形態

術前胆道評価はN群ではMRCを334例(74.9%),DIC-CTを63例(14.1%),ERCを142例(31.8%)に行ったのに対して,A群の36例では,MRCを28例(77.8%),DIC-CTを15例(41.7%),ERCを6例(16.7%)に施行した.A群はN群に比較してDIC-CTの施行率が高い結果であった.A群で,MRCとDIC-CTのいずれも施行した症例は6例で,うち3例はMRCで副肝管の分岐部および支配領域が不明瞭であったが,DIC-CTでは全例診断可能であった(Fig. 1).副肝管の形態を含めた診断率はMRCが89.3%(28例中25例),DIC-CTが100%(15例中15例)であった.副肝管の走行形態による分類では,久次ら7)の副肝管分類でI型(Fig. 2)が2例,II型(Fig. 3)が6例,III型(Fig. 4)が26例,IV型が0例,V型(Fig. 5)が2例とIII型が最も多く72%を占めた(Table 2).副肝管の支配領域は後区域が29例,前区域が2例,B5区域が3例,B6区域が2例であった(Table 2).

Fig. 1 

Preoperative investigation of the biliary anatomy.

Fig. 2 

Type I of Hisatsugu classification; Three-dimensional DIC-CT on ventral view shows the accessary hepatic duct of type I of Hisatsugu classification. The accessory hepatic duct (arrowhead) drained the right posterior section and the cystic duct (arrow) drained into the accessory hepatic duct.

Fig. 3 

Type II of Hisatsugu classification; Three-dimensional DIC-CT on caudal view shows the accessory hepatic duct of type II of Hisatsugu classification. The accessory hepatic duct (arrowhead) drained the right posterior section and representing a triple confluence of the accessory hepatic duct, cystic duct (arrow) and common hepatic duct.

Fig. 4 

Type III of Hisatsugu classification; Volume rending image of DIC-CT on anterior view (a) and three-dimensional DIC-CT on posterior view (b) demonstrates the right posterior duct (arrowheads) directly draining into the common bile duct at more cranial location than cystic duct (arrows) draining.

Fig. 5 

Type V of Hisatsugu classification; Three-dimensional DIC-CT on anterior view demonstrates the right posterior hepatic duct (arrowhead) draining into cystic duct (arrow).

Table 2 

Variations of the types of accessory hepatic ducts based on Hisatsugu classification and the drainage areas of accessory hepatic ducts

3. 術式

手術は腹腔鏡下胆囊摘出術をA群では29例(80.6%)に,N群では401例(90%)に選択し,それぞれ3例(10.3%),27例(7%)が開腹術へ移行となった.A群3例の開腹移行の理由は頸部の高度炎症が1例,胆道損傷を疑った症例が1例,もう1例は術前に久次I型の副肝管と診断し術中胆道造影を施行したが,結石の胆囊管陥頓により造影が行えず,開腹移行となった.A群の7例(19.4%)に開腹胆囊摘出術を施行し,II型とV型の症例は全例で開腹手術を選択した.N群の開腹手術選択率は10%であり,A群で開腹手術が選択される頻度が高い傾向にあり(P=0.0818),開腹術への移行率には差がなかった(P=0.4613)(Table 1).また,手術手技については,鏡視下手術では全例で頸部から胆囊漿膜の切開を開始し,胆囊管の確保を先行した.開腹手術の症例では胆囊底部からの漿膜剥離を先行し,いずれもA群とN群で差はなかった.A群は6例で術中胆道造影を施行した.I型,V型は全例で胆道造影を施行し,そのほか開腹移行となったIII型の1例,開腹手術を施行したII型1例で術中胆道造影を施行し,副肝管が描出されず開腹術へ移行した1例を除き,ほかは全例で透視下に副肝管を確認したのち胆囊管処理を行った.

4. 周術期合併症および予後

副肝管の有無にかかわらず,術中胆道損傷は認められなかった.術後1週間以内の早期に再手術を要した症例は,N群の2例に認めた.1例は胆囊周囲膿瘍合併の胆囊穿孔症例に対して開腹胆囊摘出術を施行し,術中肝損傷を来した症例である.術後肝損傷部からの胆汁漏を認め,術翌日に開腹下で肝損傷部の単純縫合,腹腔ドレナージを施行した.もう1例は腹腔鏡下手術術後に,胆囊管結紮糸の脱落が発生し,術後1日目に再手術による胆囊管の再結紮を施行した.

長期予後について,2018年3月までの観察期間中に,副肝管を有する症例で肝内結石や副肝管の狭窄・閉塞に起因した胆管炎の発症は認めていない.ただし,III型副肝管の1例で,術後2年目に右横隔膜下膿瘍で手術を行った症例を経験した.右横隔膜下膿瘍が胸腔に穿通し右膿胸を合併し,横隔膜下膿瘍ドレナージ,開胸膿胸掻爬術を施行した.この症例は初回手術で,副肝管の損傷なく胆囊摘出術を終了したが,術中胆囊穿孔があり,腹腔内落下結石が横隔膜下膿瘍の原因となった可能性があると考えている.

考察

副肝管の報告は古くから認められるが1),一般的に定義は曖昧で,異所肝管という呼称と混同されることもある.臨床的には,区域以下の肝領域を支配する肝内胆管が肝外を走行し,総胆管,総肝管,胆囊や胆囊管に合流する解剖学的変異と認識されていることが多い2)3).頻度は0.8~31%とされるが4)5),剖検例では35%との報告例もあり8),決して少なくない.自験例では482例中36例(7.5%)に副肝管を認め,これまでの報告例と同程度の発症頻度であった.管径は副肝管の支配領域に比例するとされ9),自験例と同様に後区域肝管の報告が多いが10)11),前区域枝や左肝管,尾状葉枝の報告例もみられる12)~16)

胆囊摘出術術前の胆道評価のほか,偶発的な術中胆道損傷,術後胆汁漏で発見されることが多く,胆囊結石症,胆囊ポリープや胆囊線筋症を原疾患とした報告例が多い.少数ではあるが,膵癌や胆道癌など悪性疾患での発症例も報告されている13)17)18).他の胆道解剖変異との合併もみられ,先天性胆道拡張症での報告例が散見されるほか19)~23),無胆囊や胆囊低形成症との合併もみられた24)25)

副肝管は術前に診断に至らないことも多く,術中偶発的に損傷し発見された症例も散見される26)27).自験例では術中に初めて副肝管の診断に至った症例は1例のみであった.術前胆道走行評価について,MRCやDIC-CTによる評価が一般的でない頃の報告では,ERC,DICのみの評価で副肝管の術前診断率は37~53%とそれほど高率ではない26)28).近年の報告では主にMRC,DIC-CTおよびERCを用いた胆道走行評価が主体となっている.MRCとDIC-CTの診断率の比較では,DIC-CTのほうが胆囊管や後区域枝の描出率は高いとする報告が多い29)30).宮崎ら29)は,術中胆道造影とDIC-CTの結果を比較し,副肝管の描出はDIC-CTの2D像では全例が術中胆道造影検査の結果と合致していたが,3D像では151例中2例が偽陰性で,副肝管と胆囊管合流異常の描出について感度は90%,特異度は99.2%であったと報告している.実臨床では,MRCと比較してDIC-CTで副作用の発現率が高いという観点から,MRCもしくはERCを胆道走行評価の基本とし,副肝管が疑われる症例ではDIC-CTを追加しているとする報告が多かった.自験例でも副肝管の走行形態の診断率はDIC-CTで100%であり,MRCで同定できなかった副肝管分岐部や支配領域の診断も可能であった.MRCやERCで副肝管が疑われる症例で,走行や支配領域が明瞭に描出されていない場合は,積極的にDIC-CTを施行すべきと思われる.

術式について,副肝管症例でも術式の工夫により,鏡視下手術を施行可能とする報告が多い.倉田ら2)は,胆囊頸部剥離の際に,胆囊漿膜下層内層を露出する層でcritical viewを確保する基本手技の徹底により,V型以外の副肝管症例では胆道損傷を回避できると報告している.また,胆囊床からの剥離に関しては,逆行性の剥離は胆囊管のみにとどめ,底部から順行性に胆囊剥離をすすめる,いわゆるnormograde methodを推奨する報告が多い31)~34).術中胆道造影が胆道損傷回避に有用であるとする報告も散見され35)~37),副肝管症例についても,術中胆道造影により副肝管を同定し,損傷回避可能であったとの報告もある38).自験例では副肝管症例の36例中6例で,術中胆道造影を施行している.特にI型,V型の症例は全例で術中胆道造影を施行しており,I型症例では透視下に胆管および副肝管を確認しつつ,鏡視下手術が完遂可能であった.副肝管損傷を疑い開腹移行となったIII型の症例も,胆道造影により副肝管が温存されていることを確認可能であった.Nojiら39)は,術中胆道造影よりも,術前に内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage;以下,ENBDと略記)留置を施行し,術中ENBD tubeより胆道造影を行ったほうが,副肝管の描出率が高く,開腹移行率と胆道損傷率も正常解剖症例と同等であったと報告している.ENBD留置が術中胆道造影に有用であるとする報告例40)~42)のほか,見市ら43)と豊田ら44)は,ENBDが胆囊管や副肝管同定のためのステントの役割をしえたと報告している.特に胆囊管の結石嵌頓例など,胆囊と総胆管の交通が遮断されている場合は,術中造影で胆囊側から造影剤を注入しても,総胆管・副肝管の情報は得られず,術前ENBD留置は有用と考えられる.自験例でもI型症例で術中胆道造影が不成功で開腹手術に移行した1例を経験した.この症例は胆囊管に結石が嵌頓していたため,腹腔鏡下での胆道造影が不成功となり,開腹下で胆囊管結石の位置を確認したのち,胆道造影を行って,副肝管の損傷を起こすことなく胆囊管の処理位置の決定を行った.この症例の術前診断はMRCのみでDIC-CTを行っておらず,術前診断では胆囊管結石の嵌頓に至っていなかった.術中胆道造影が副肝管損傷の予防に有用であるとする報告が多数である一方,術中胆道造影が有用であるのは術前に副肝管を認識していることが前提で,すでに副肝管を損傷しているか,I型やV型では副肝管合流部より中枢側にカニュレーションした時点で副肝管を認識できない可能性もあり,あくまでも補助的診断にすぎないとの意見もある2)45).副肝管同定のため,術中蛍光造影法を用いた報告も複数みられた46)~49).Tsurudaら46)は,手術開始2時間前および術中にindocyanine green色素の静脈内注射を行い,蛍光造影の増強の程度により,副肝管と胆囊動脈が識別可能であったと報告している.副肝管の形態別に自験例の術式をみると,II型およびV型の副肝管症例は全例で開腹手術を選択した.I型とV型の副肝管は,胆囊管を切離する部位によっては直ちに副肝管損傷の原因となる.そのため特に胆道損傷の危険が高いとされ50),V型の副肝管損傷の報告例も散見される26)51).損傷回避のためにさまざまな術式の工夫がなされており,鏡視下手術を施行したI型の報告例は,いずれも胆囊管に仮止めのclipをかけ,術中胆道造影によって副肝管を同定したのち胆囊管を切離している37)43).自験例でもI型とV型の症例は全例で術中胆道造影を施行している.V型の副肝管症例に対する鏡視下手術では,術前に副肝管にENBD tubeを留置し,術中胆道造影を併用した症例があった43)52).V型の症例では胆囊管の処理が問題となる.副肝管温存のために胆囊頸部遺残となった報告例もあるが53),術後の胆囊結石や胆囊炎再発を回避するため,遺残胆囊となる場合は胆道再建を考慮すべきとの意見もある.倉田ら2)は,後区域枝である副肝管が胆囊漏斗部に合流する症例に対して,胆囊摘出術および後区域肝管空腸吻合を施行している.自験例のV型2症例では,いずれも副肝管が胆囊管に合流する症例であり胆囊管切離が可能であったが,開腹手術を選択した.術中胆道造影を併用した胆囊摘出術を検討したが,1例は頸部に結石が嵌頓していたことから,開腹下に結石を除去し胆道造影を行った.もう1例は,V型の副肝管損傷の報告例が多いことを考慮し,開腹手術を選択した.本症例と先ほど述べた開腹移行のI型の1例は,術中胆囊穿刺の手技を省略でき,副肝管合流部を超えたカニュレーションを回避しうるという観点からも,術前にENBD tubeを留置し,術中胆道造影を併用した鏡視下手術を検討しえたと考える.II型の症例は初期の症例が多く,全例で開腹手術が選択されていたが,これまでの報告例ではI型,V型の症例ほど胆道損傷の頻度は高くなく,炎症所見のない症例では,鏡視下手術を選択してもよかったと考える.

胆道走行異常例では,正常解剖例と比較して高頻度に胆道損傷を引き起こしやすいとされている54)~56).副肝管症例では,胆囊管や胆囊動脈と副肝管を誤認しやすいI型,V型の症例で胆道損傷の危険性が高いとされるが50),III型の症例でも誤認による切離や,胆囊管のクリップが副肝管の一部をクリッピングし副肝管狭窄に至った報告例もあり57),副肝管の形態にかかわらず注意が必要である.損傷した副肝管について,直径1~2 mm以下なら結紮してもよいとする意見もある58).しかしながら,損傷した副肝管を結紮し,術後30年目に閉塞性胆管炎を来し肝切除を要した症例も報告されている59).蜂須賀ら33)とThompsonら60)は,胆汁漏出の有無や副肝管の支配領域,肝内胆管との交通の有無を考慮し胆道再建が必要か,離断が可能かを判断すべきとしている.

副肝管症例に対する胆囊摘出術について考察した.自験例では副肝管に起因する胆道損傷は認めなかったものの,術前に副肝管を認識していないと思われる症例も複数認められた.副肝管損傷の多くは術前に胆道走行異常を認識していなかったことに起因した偶発的な発症であり,副肝管の有無,特に後区域枝肝管の走行異常に着目した術前胆道走行評価が重要であると考える.自験例では副肝管症例で開腹手術の選択が多かったが,炎症や癒着の影響が少ない症例では,腹腔鏡下に手術を完遂しえた.副肝管を有する症例では走行形態別に術式を検討すべきであり,III型の副肝管では胆囊頸部から漿膜切開を開始し,層を保った胆囊床の剥離が可能である症例は鏡視下手術が可能と考える.I型,V型の症例では,術中胆道造影を併用し副肝管を透視下に確認し,胆囊管を処理することで鏡視下手術は安全に施行できると考える.自験例では施行しなかったが,ENBD tubeの術前留置も有用であると考える.術前胆道走行評価を徹底し,鏡視下に手術可能である症例を選択すること,副肝管の形態によっては術中胆道造影の併用,術前にENBD tubeの留置を検討するなど,術式の工夫によって,副肝管を有する症例であっても腹腔鏡手術は安全に施行可能であると思われる.

利益相反:なし

文献
 

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