2020 Volume 53 Issue 5 Pages en5-
本稿はGW中に執筆しておりますが,本邦における新型コロナ肺炎の発生数は漸減傾向を示し,何とか医療崩壊寸前のところで踏みとどまっています.しかし,人工呼吸器使用数などの指標は低下しておらず,まだまだ油断できない状況です.会員の皆さんの多くが感染のリスクのなかで日々の業務に献身的に打ち込まれていることと推察いたします.このまま下火になってくれることを切に祈るものであります.
皆様,コロナの影響で手術を控えていらっしゃるでしょうか?先日ある会で色々な地域の病院の状況を伺ったところ,かなり地域差がみられるようでした.全くコロナ前と同じに手術を行っているところから,一切ストップしているところまで大きなばらつきがあります.小生の勤務する病院は約50%減です.近隣の開業医の先生が消化管内視鏡をストップしている影響か,消化管の手術が減っています.肝胆膵もICUが手薄になっているので術後合併症のことを考えると大きな手術は手控えざるを得なくなっています.患者さんには術前化学療法に回ってもらっているのですが,3~4か月後には一気に手術せねばならず今から少し心配しております.
さて,第53巻5号の掲載論文は8編です(原著1編,症例報告7編).また,今号には第74回日本消化器外科学会総会特別企画「オペレコを極める」の原稿2編も掲載されています.本号も珍しい症例報告や貴重な原著論文が掲載されています.その中から今月の一押し論文として,須田 健先生らの『幽門側胃切除術を施行しえた先天性第VII因子欠乏症の1例』を選ばせていただきました.本症例では今まで出血の既往歴や家族歴はなく,血液凝固検査の異常で発見されました.術前に遺伝子解析を施行し,FVII遺伝子エクソン1のミスセンス変異を検出されています.術後は経時的にFVII因子を測定し,5~8時間ごとに製剤を投与されることによって活性値を良好に保つことができ,第11病日に退院されています.クロスミキシングテストの使い方や同種抗体の出現などの注意点についてもわかりやすく書かれており,大変勉強になりました.まれな先天疾患ではありますが,皆様も知っておかれると良いと思います.ぜひご一読ください.
(遠藤 格)
2020年5月11日