The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
Online ISSN : 1348-9372
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ISSN-L : 0386-9768
ORIGINAL ARTICLE
Clinical Outcomes of Emergency Surgery for Acute Cholecystitis: Safety, Optimal Timing of Surgery, and Effects in Extremely Elderly Patients
Keiji NagataTaku IidaShigeyuki HaradaAya MoriMasato MatsuuraKojiro NakamuraTetsuya ShiotaJunji IwasakiAtsushi ItamiTakahisa Kyogoku
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2021 Volume 54 Issue 7 Pages 447-455

Details
Abstract

目的:急性胆囊炎に対する治療は,急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドラインやTokyo Guidelines 2018に基づき早期手術が推奨されており,当院における緊急手術例の治療成績から早期手術の安全性について検証した.方法:2013年11月から2018年10月までに,当院で施行した急性胆囊炎に対する緊急手術例201例を対象とし,1)急性胆囊炎発症から手術までの期間(72時間以上:n=42/未満:n=159)と2)年齢(85歳以上:n=23/未満:n=178)に基づき各々2群に分類し,その治療成績の詳細を後方視的に検討した.結果:1)発症から72時間未満の早期手術群では晩期手術群と比較し,有意に腹腔鏡下胆囊摘出術施行率が高く(82.4% vs 57.1%;P=0.0005),術中出血量が少なく(92.9 ml vs 185.1 ml;P<0.0001),術後合併症率は低値(6.3% vs 16.7%;P=0.03),術後入院期間は短期であった(7.4日vs 8.5日;P=0.029).2)超高齢者群(85歳以上)では非超高齢者群と比較し,腹腔鏡下胆囊摘出術施行率や合併症発症率に差は認めなかったが,有意に術中出血量は増加し(166.1 ml vs 105.2 ml;P=0.04),術後入院期間は延長した(14.2日vs 6.8日;P=0.0001).結語:急性胆囊炎に対する外科的治療の成績は概ね良好で,安全に施行可能であった.ただし,発症から72時間以上経過した症例や85歳以上の超高齢者の緊急手術例では出血量の増加と入院期間の延長を認め,厳重な周術期管理を要すると考えられた.

Translated Abstract

Purpose: The treatment strategy for acute cholecystitis (AC) is based on clinical guidelines such as the Tokyo Guidelines 2018, and early surgery is recommended. However, we sometimes encounter patients with AC who are high risk for early emergency surgery. Materials and Methods: From November 2013 to October 2018, 201 patients with AC underwent emergency surgeries at our hospital. These patients were divided into groups based on the time from AC onset to surgery and age: (1) early cholecystectomy within 72 hours of AC onset (n=159) and delayed cholecystectomy over 72 hours after AC onset (n=42); and (2) extremely elderly patients over 85 years old (n=23) and patients less than 85 years old (n=178). Clinical outcomes were compared for each of these groups. Result: In patients with early cholecystectomy, the rate of laparoscopic cholecystectomy (Lap C) was significantly higher (82.4% vs. 57.1%, P=0.0005), intraoperative blood loss was significantly lower (92.9 vs. 185.1 ml, P<0.0001), the postoperative complication rate was significantly lower (6.3% vs. 16.7%, P=0.03), and the postoperative hospital stay was significantly shorter (7.4 vs. 8.5 days, P=0.029). Extremely elderly patients had significantly higher intraoperative blood loss (166.1 vs. 105.2 ml, P=0.04) and a significantly longer postoperative hospital stay (14.2 vs. 6.8 days; P=0.0001) compared to patients less than 85 years old, but there were no differences in the rates of Lap C (65.2% vs. 78.7%, P=0.15) and postoperative complications (13.0% vs. 7.9%, P=0.40). Conclusion: Patients with AC who underwent surgery at more than 72 hours after onset and extremely elderly patients over 85 years old had increased intraoperative blood loss and a prolonged postoperative hospital stay. Therefore, careful perioperative management may be required in these high risk patients with AC.

はじめに

急性胆囊炎はしばしば遭遇する腹部救急疾患で,急性期には外科的切除を含めた適切な治療が必要であり,全身状態を考慮した重症度評価を迅速に診断して治療方針を決定することが肝要である.

以前は診療ガイドラインが存在せず,各施設間で治療方針や成績もさまざまであったが,2005年に国内版の急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン(以下,診療ガイドラインと略記)が出版され,さらには2007年に国際版であるTokyo Guidelinesが出版されたことで,治療方法の標準化が急速に進んだ.

その後,ガイドラインも改訂が進んでいるが,現在の急性胆囊炎に対する治療は,診療ガイドライン20131),20182)やTokyo Guidelines3)(以下,TGと略記)に基づいた早期手術が基本である.TG13では発症後72時間以内での早期手術を推奨していたが,TG18では発症からの経過時間にこだわらず早期に手術を行うことを推奨されるようになった.

そのため当院でも原則的に早期手術を第一選択とし積極的に治療を行ってきたが,緊急手術には重篤な基礎疾患を有する患者,抗血栓薬内服中の患者など,リスクを伴う症例が存在するのも事実である.

また,近年の高齢化により高齢者に対する緊急手術例も増加しており,85歳以上を超高齢者と分類し4)5),超高齢者に対する早期の手術治療の安全性を検討する必要がある.

目的

当院において急性胆囊炎に対し緊急手術を行った症例を対象とし,急性胆囊炎発症から手術施行までの手術時期や患者年齢に基づいて,緊急胆囊摘出術の治療成績を後方視的に検討し,その安全性について評価を行った.

方法

2013年11月から2018年10月に当院で経験した急性胆囊炎症例229例のうち,percutaneous transhepatic gallbladder drainage(以下,PTGBDと略記),percutaneous transhepatic gallbladder aspiration(以下,PTGBAと略記)にて待機的に手術を施行した症例は除き,緊急手術を行った201例を対象とした.当院では,急性胆囊炎に対する治療は原則的に早期手術を第一選択とし,緊急手術を行っている.しかし,敗血症性ショックから多臓器不全を来し,全身状態が極めて不良な症例や重篤な基礎疾患を有する症例などでは,耐術能を総合的に評価して周術期リスクが高いと判断した場合は,PTGBDやPTGBAなどの胆囊ドレナージ後に待機手術を施行する方針としている.

本研究の対象からは除外したが,PTGBDやPTGBAにて胆囊ドレナージ後,28例に待機的手術を行った.その28例の詳細は,敗血症性ショックから多臓器不全を来し,全身状態が極めて不良な症例が7例,重篤な基礎疾患を有する症例が15例,前医でPTGBD挿入後に当院に転院となった症例が4例,胃全摘術後で上腹部手術既往があり,PTGBD後に待機的に手術を行った症例が2例であった.

研究デザインとして1)急性胆囊炎発症からの手術時期,2)超高齢者症例の2項目に着目して,それらの治療成績の検討を行った.

1)手術時期に基づいて,急性胆囊炎発症から72時間以内に手術を施行した早期手術例と72時間以上を経過してから手術を施行した晩期症例の2群に分類した.さらに,発症後7日間以上を経過した症例と7日間未満の症例に分類した.

2)85歳以上の超高齢者と85歳未満の非超高齢者の2群に分類した.さらに,診療ガイドライン2018に記載のある手術延期を検討する危険因子に基づき2),急性胆囊炎重症度がGrade I(軽症),II(中等症)では年齢調整表を使用した年齢調整を含んだチャールソン併存疾患指数(age-adjusted Charlson comorbidity index;以下,CCIと略記)6)7)6点以上またはAmerican Society of Anesthesiologists-physical status(以下,ASA-PSと略記)3以上,Grade III(重症)ではCCI 4点以上またはASA-PS 3以上をhigh risk群,それ以外をlow risk群と定義して,超高齢者症例を2群に分類し,下記項目につき比較検討した.

検討項目は患者背景因子(年齢,性別,ASA-PS による術前状態),急性胆囊炎の重症度(TG18による重症度判定基準)2),手術時期(胆囊炎発症から手術までの待機時間),手術因子(手術時間,出血量,腹腔鏡下胆囊摘出術施行率,開腹移行率),Clavien-Dindo分類(以下,CD分類と略記)による重症度を含めた術後合併症8)の詳細,術後入院期間とし,各群間で比較検討を行った.

統計学的解析はJMP10.0.2®(SAS Institute Inc. USA)を使用し,2群間の比較にはχ2検定および Mann-Whitney U検定を用いて行い,P<0.05を統計学的に有意差ありとした.

結果

1. 胆囊炎発症から手術時期による緊急手術例の比較

早期手術例は159例,72時間以上を経過した晩期手術例は42例であった(Table 1).

Table 1  Comparison of outcomes based on timing of surgery within 72 hours (early cholecystectomy) and over 72 hours (delayed cholecystectomy) after onset of acute cholecystitis
Early cholecystectomy (n=159) Delayed cholecystectomy (n=42) P value
Age (yrs) 66.4±14.9 68.3±14.6 0.51
Gender (male/female) 101/58 28/14 0.71
ASA-PS (n) 1/2/3 64/72/23 13/24/5 0.39
Severity grading of AC Grade I/II/III 110/43/6 0/39/3 <0.001
Time to operation (day) 1.0 (1–2) 4.5 (4–6) <0.001
Operation time (min) 130.4±45.7 139.6±39.9 0.17
Bleeding (ml) 92.9±171 185.1±167 <0.0001
Laparoscopic procedure 131 (82.4%) 24 (57.1%) 0.0005
Conversion rate 6.1% (8/131) 8.3% (2/24) 0.68
Postoperative complication rate 6.3% (10) 16.7% (7) 0.03
Clavien-Dindo II/IIIa/IIIb/IVa/IVb/V 4/5/0/1/0/0 5/1/1/0/0/0
Severe postoperative complication rate (≥Grade III) 3.8% (6) 4.8% (2) 0.35
Postoperative hospital stay (day) 7.4±6.9 8.5±6.1 0.029

ASA-PS, American Society of Anesthesiologists–physical status; AC, acute cholecystitis; Grade I, mild; Grade II, moderate; Grade III, severe.

72時間を基準とした手術時期についての2群間の比較(Table 1)では,年齢,性別,術前ASA-PSは両群に差を認めなかったが,晩期手術群で急性胆囊炎重症度が中等症以上の割合が有意に高率であった.また,晩期手術群での胆囊炎発症から手術までの待機期間は中央値で4.5日(4~6日)であった.手術因子では手術時間は両群間で差は認めなかった(130.4分vs 139.6分)が,術中出血量は晩期手術群と比較し,早期手術群で有意に少なかった(92.9 ml vs 185.1 ml;P<0.0001).術式では,早期手術群で腹腔鏡下胆囊摘出術施行例は131例(82.4%),晩期手術群では24例(57.1%)であり,早期手術群で腹腔鏡下胆囊摘出術施行率が有意に高率であった(P=0.0005).開腹移行は早期手術群で8例(6.1%),晩期手術群で2例(8.3%)であり両群間で差は認めなかった.

開腹移行の理由としては,胆囊頸部の炎症が強く,胆囊頸部剥離困難で胆囊管処理に難渋した症例が4例,高度炎症のため胆囊と腹壁や大網との炎症性癒着が高度な症例が3例,炎症のため術中出血が多くなり,開腹による止血が必要と判断した症例が2例,上腹部手術既往のため腹腔内癒着が強い症例が1例であった.

Clavien-Dindo分類II以上の術後合併症は全症例の8.5%(17/201例)に認めた.その内訳はCD分類II 9例,IIIa 6例(腹腔内膿瘍に対して,経皮的ドレナージ術2例,胆石性胆管炎に対し内視鏡的胆道ドレナージ術4例),IIIb 1例(術後胆汁瘻に対し,胆管空腸吻合術を施行),IVa 1例(横隔膜弛緩症の既往のある87歳女性が術後呼吸不全を呈し,再挿管・人工呼吸管理を要した)であった.晩期手術群で合併症発症率は有意に高値であった(6.3% vs 16.7%;P=0.03)が,CD分類III以上の術後重症合併症は両群間で有意差は認めなかった(3.8% vs 4.8%;NS).また,術後30日以内死亡は認めなかった.

胆道合併症は前述の如く晩期手術群の1例のみで,重症急性胆囊炎(Grade III)に対し,開腹胆囊摘出術を施行したが,胆囊管と総胆管周囲の強固な炎症性癒着のため,術中総肝管損傷を来した.術後総肝管からの胆汁瘻を認め,術後4日目に再手術による胆管空腸吻合術を要した.

術後入院期間は早期手術群で有意に短期であった(7.4日vs 8.5日;P=0.029).

また,急性胆囊炎発症から7日以上を経過してからの超晩期手術例は9例,7日未満での手術例は192例であった(Table 2).超晩期手術例は9例の詳細を検討すると,胆囊炎の重症度は全例Grade II以上であり,7日未満の早期手術群に比べ有意に重症度が高かった.なお手術までの待機時間は中央値で8日(7~9.5日)であった.

Table 2  Comparison of outcomes based on timing of surgery within 7 days (earlier cholecystectomy) and over 7 days (extremely delayed cholecystectomy) after onset of acute cholecystitis
Earlier cholecystectomy (n=192) Extremely delayed cholecystectomy (n=9) P value
Age (yrs) 66.8±14.8 67.2±15.9 0.88
Gender (male/female) 123/69 6/3 0.87
ASA-PS (n) 1/2/3 74/92/26 3/4/2 0.76
Severity grading of AC Grade I/II/III 110/74/8 0/8/1 0.0033
Time to operation (day) 1.0 (1–3) 8.0 (7–9.5) <0.001
Operation time (min) 131.8±43.9 142.3±60.1 0.75
Bleeding (ml) 108.7±173 188.7±203 0.099
Laparoscopic procedure 150 (78.1%) 5 (55.6%) 0.12
Conversion rate 6.7% (10/150) 0.0% (0/5) 0.55
Postoperative complication rate 8.3% (16) 11.1% (1) 0.77
Clavien-Dindo II/IIIa/IIIb/IVa/IVb/V 8/6/1/1/0/0 1/0/0/0/0/0
Severe postoperative complication rate (≥Grade III) 4.2% (8) 0.0% (0) 0.53
Postoperative hospital stay (day) 7.5±6.6 9.8±9.9 0.38

ASA-PS, American Society of Anesthesiologists–physical status; AC, acute cholecystitis; Grade I, mild; Grade II, moderate; Grade III, severe.

術中出血量は超晩期手術例で多い傾向は示したが,統計学的な有意差は認めなかった(108.7 ml vs 188.7 ml;P=0.099).

2. 85歳以上の超高齢者での緊急手術成績

85歳以上の超高齢者群は23例,85歳未満の非超高齢者群は178例であった(Table 3).超高齢者群でASA-PS 2以上の割合が有意に高かったが,急性胆囊炎重症度は両群間で差を認めなかった.腹腔鏡下胆囊摘出術施行率(65.2% vs 78.7%;NS),手術時間(128.9分vs 132.7分;NS)に両群間で差を認めなかったが,開腹移行率(20.0% vs 5.0%;P=0.024),術中出血量(166.1 ml vs 105.2 ml;P=0.04)は超高齢者群で有意に増加した.術後合併症発症率(13.0% vs 7.9%;NS)や,CD分類III以上の重症合併症発症率(8.7% vs 3.4%;NS)に両群間で差は認めなかった.CD IVaの合併症(前述の如く,術後呼吸不全を呈し,再挿管・人工呼吸管理を要した症例)を超高齢者群の1例に認めた.術後入院期間は超高齢者群で有意な延長を認めた(14.2日vs 6.8日;P=0.0001).退院先は超高齢者群で有意にリハビリテーション施設への転院が多かった(26.1% vs 1.7%;P<0.0001).転院理由の内訳は,非超高齢者群で整形外科入院中に発症した急性胆囊炎症例で整形外科リハビリテーション目的に転院した症例が1例,超高齢者群で術後呼吸不全のため気管切開術を行った症例でリハビリテーション目的に転院となった症例が1例,その他は全例ADL低下のためリハビリテーション目的に転院となった症例であった.リハビリテーション施設へ転院した症例は9例(超高齢者6例,非超高齢者3例)であり,超高齢者群の4例,非超高齢者群全例で転院後の経過に関して追跡が可能であった.超高齢者群で,1例はリハビリテーション施設へ転院後84日目で自宅退院となっていたが,2例はリハビリテーション施設へ転院後に,肺炎や尿路感染症を契機とした心不全のため転院後45日,52日で死亡していた.また,転院後に脳梗塞を発症し自宅退院できずに医療療養病棟にて長期入院となり,入院中に誤嚥性肺炎を生じ転院後2年7か月で死亡した症例を1例認めた.非超高齢者群では3例全例が転院後60日以内に自宅もしくは介護老人保健施設へ退院となっていた.

Table 3  Comparison of outcomes in patients aged over 85 years old and less than 85 years old
≥85 (n=23) <85 (n=178) P value
Age (yrs) 87.6±3.0 64.1±13.5 <0.001
Gender (male/female) 10/13 119/59 0.03
ASA-PS (n) 1/2/3 2/15/6 75/81/22 0.005
Severity grading of AC Grade I/II/III 11/11/1 99/71/8 0.076
Time to operation (day) 2.0 (1–3) 1.0 (1–3) 0.08
Operation time (min) 128.9±41.9 132.7±45.0 0.74
Bleeding (ml) 166.1±203 105.2±170 0.04
Laparoscopic procedure 15 (65.2%) 140 (78.7%) 0.15
Conversion rate 20.0% (3/15) 5.0% (7/140) 0.024
Postoperative complication rate 13.0% (3) 7.9% (14) 0.40
Clavien-Dindo II/IIIa/IIIb/IVa/IVb/V 1/1/0/1/0/0 8/5/1/0/0/0
Severe postoperative complication rate (≥Grade III) 8.7% (2) 3.4% (6) 0.22
Postoperative hospital stay (day) 14.2±15.3 6.8±4.2 0.0001
Transfer to rehabilitation facility 26.1% (6) 1.7% (3) <0.0001

ASA-PS, American Society of Anesthesiologists–physical status; AC, acute cholecystitis; Grade I, mild; Grade II, moderate; Grade III, severe.

また,超高齢者群をhigh risk群(n=16),low risk群(n=7)に分類した検討では,術後合併症発症率(18.8% vs 0%;NS),CD分類III以上の重症合併症発症率(12.5% vs 0%;NS)や,術後入院期間(15.4日vs 10.8日;NS)に両群間で統計学的有意差は認めなかったものの,high risk群で合併症発症率は高く,術後入院期間は長い傾向があった(Table 4).

Table 4  Comparison of outcomes based on risk classification (high or low) in extremely elderly patients
High risk (n=16) Low risk (n=7) P value
Age (yrs) 87.4±3.0 88.0±3.3 0.78
Gender (male/female) 7/9 3/4 0.97
ASA-PS (n) 1/2/3 1/9/6 1/6/0 0.162
age-adjusted CCI 6.1±0.3 5.0±0.0 <0.0001
Severity grading of AC Grade I/II/III 8/7/1 3/4/0 0.715
Time to operation (day) 2.0 (1–3) 2.0 (1–5) 0.73
Operation time (min) 130.1±41.2 126.1±46.6 0.79
Bleeding (ml) 116.9±117 278.6±310 0.54
Laparoscopic procedure 11 (68.8%) 4 (57.1%) 0.59
Conversion rate 6.3% (1/16) 28.6% (2/7) 0.14
Postoperative complication rate 18.8% (3) 0.0% (0) 0.22
Clavien-Dindo II/IIIa/IIIb/IVa/IVb/V 1/1/0/1/0/0 0/0/0/0/0/0
Severe postoperative complication rate (≥Grade III) 12.5% (2) 0.0% (0) 0.33
Postoperative hospital stay (day) 15.4±17.8 10.8±3.9 0.68

ASA-PS, American Society of Anesthesiologists–physical status; age-adjusted CCI, age-adjusted Charlson comorbidity index; AC, acute cholecystitis; Grade I, mild; Grade II, moderate; Grade III, severe.

術後退院の基準としては,術後合併症(特に感染性合併症や胆道合併症)を認めず,血液検査で炎症反応の改善を確認した段階で退院可能としている.しかし,特に高齢者では術後のADLが低下し,術後リハビリテーションや在宅調整が必要な症例が多く,その調整が整い次第,転院または退院としている.

考察

1. 緊急手術の手術時期について

前述の如く,急性胆囊炎の治療は診療ガイドラインに基づき早期手術が原則である.2013年診療ガイドライン・TG13では急性胆囊炎重症度を判定し,軽症,中等症であれば発症後72時間以内での早期手術が推奨され,2018年診療ガイドライン・TG18では急性胆囊炎重症度や患者の耐術能を判断し,発症からの経過時間にこだわらず早期に手術を行うことを推奨されるようになった2)9)

従来,早期手術の定義は,多くのRCTで採用されている発症後72時間以内の手術施行とされており,腹腔鏡下胆囊摘出術による早期手術群と待機手術群の比較で術後合併症率や開腹移行率に差はないが,早期手術群では在院期間が有意に短期であったとの報告がある10)11)

また,日台共同研究では,入院から腹腔鏡下胆囊摘出術までの期間が3日以内とそれ以降で開腹移行率に差はなく,30日以内死亡率にも差を認めなかったと報告されている12).さらに,急性胆囊炎手術の最適な時期を人口ベースのコホート研究で検討した報告では,入院後早期に手術を受けた患者で,開腹移行率(0~3日群:3.6% vs 4~7日群:4.0% vs 8日以降群:4.7%;P=0.001),術後の内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)施行率(1.1% vs 1.5% vs 1.9%;P<0.001),胆管損傷発生率(0.6% vs 1.0% vs 1.8%;P<0.001)が有意に低く,術後入院期間短縮にも関連していたと報告されている13)

一方で発症から1週間以内に施行した早期手術群と1週間以上経過した待機手術群を比較したカナダからの研究結果では,術後30日以内死亡率(0.46% vs. 0.64%;P=0.21)や腹腔鏡下胆囊摘出術からの開腹移行率(11% vs. 10%;P=0.68)は両群間で差を認めなかったが,胆管損傷率は早期手術群で有意に低率であった(0.25% vs 0.54%;P=0.025)と報告されている14)

また,スイスからの報告では,入院当日に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行された群と入院から6日以降での手術施行群との比較では,入院当日に手術を施行した群で術後合併症発生率と開腹移行率が有意に低率であったと報告している15)

これらの報告などから,発症後72時間以内に拘らずに,患者の状態に応じて1週間以内に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行することが重要である.

一般的に急性胆囊炎は発症から時間経過とともに浮腫性の急性炎症が瘢痕化し,組織が一様に硬くなって剥離操作が非常に困難となり,胆管損傷のリスクが高くなると報告され16),手術時期が非常に重要となる.

今回,当科での急性胆囊炎発症時期による緊急手術例の検討では,術式は発症後72時間以内の早期手術群で腹腔鏡下胆囊摘出術の施行率が高く,発症から72時間以上経過した晩期手術群では有意に多量の術中出血量,高い術後合併症発症率,術後入院期間の延長が認められた.早期手術群と晩期手術群ともに重篤な合併症発症はなく,術後30日以内死亡は認めておらず,安全に手術は施行可能であったが,晩期手術群で急性胆囊炎の重症度が高かったため,このような結果になったと推測され,手術時期による手術の難易度の評価は非常に重要である.

また,発症後7日以降で手術を行った症例は9例と少数であったが,7日以内の早期手術群との安全性で差を認めなかった.発症後,最長11日で手術を施行した症例もあったが,特に合併症なく経過した.

発症後7日以降で手術を行った9症例の中には,前医で抗菌療法による保存的治療を施行されるも症状が改善せず,当科に紹介受診となったような症例(3例)や,患者自身が腹部症状出現後も放置し,症状が増悪してから医療機関を受診するなど,治療開始が遅れた症例(4例)も認められた.

ただ当科の経験だけでは,急性胆囊炎発症から緊急手術まで許容できる最長期間がどのぐらいかは分からないが,発症から2週間を超える症例は胆囊ドレナージを施行したうえで待機的外科的切除を選択した方が,胆道損傷を回避するにも賢明ではないかと考える.

当科では腹部超音波検査やCTでの術前画像検査で,胆囊炎の状況,特に頸部から三管合流部への炎症波及の程度を十分検討し,腹腔鏡下手術か開腹術かの術式選択を行っているが,炎症が進行している72時間以降の晩期手術例で有意に開腹術の割合が多くなるのは,胆管損傷などのリスク回避・安全性を考慮するとやむをえない結果であると考えている.

患者の全身状態や手術適応・術式選択を含め,慎重かつ迅速な評価が重要であるが,本研究でも発症後7日以内の早期手術は安全性が担保されており,ガイドラインの遵守は妥当と思われる.

2. 超高齢者に対する緊急手術について

人口の高齢化により高齢者に対する緊急手術例は増加しており,とりわけ85歳を越える超高齢者に対する緊急手術例もまれではなく,超高齢者に対する手術治療の安全性を検討する必要がある.

以前より80歳以上の高齢者に対する腹腔鏡下胆囊摘出術の安全性については多くの報告例があり,その安全性と低侵襲性は確立され,標準術式となっている17)18).ただし高齢者に対する治療方針に関しては,基礎疾患の有無や術前のADLやASA-PSなどの全身状態を考慮し,慎重に手術適応を決定しなければならない.

診療ガイドライン2018・TG18では重症度別に手術危険因子を治療方針選択の基準としており2),手術の危険因子に関しては,米国麻酔科学会による術前状態分類(ASA-PS)と年齢調整表を使用した年齢調整を含んだチャールソン併存疾患指数(CCI)6)7)を用いて評価している.

Grade I(軽症),II(中等症)であれば,CCI 6点を高リスク,Grade III(重症)であればCCI 4点以上を高リスクと規定され,30日死亡率が増加するため10),CCIは手術危険因子として提案されている.このCCIでは年齢が考慮されており,例えば,81歳以上を越えると5点が加点されるため,年齢が上がるほどCCIのポイントは上昇し,手術の危険因子が高くなると判断されてしまうことになる.

本研究での85歳以上の超高齢者に対する緊急手術例の検討では,術前ASA-PSは有意に高く,術中出血量が有意に多かったが,手術時間や術後合併症発生率には差は認めなかった.

術中出血量が増加した原因は,胆囊炎の重症度にも関連するが,年齢的な組織脆弱性なども関与していることも否定できないため,より丁寧かつ確実な手術操作が求められる.

術後入院期間に関しては,超高齢者群で有意に延長していたが,この原因としては,超高齢者群で有意にリハビリテーション施設への転院が多く,併存合併症に対する治療や高齢のため離床が進まず,せん妄などを発症するなど社会的要因により入院が長期化した症例が複数含まれていることも影響していると考えられる.そのため可能なかぎり,超高齢者には腹腔鏡下胆囊摘出術による低侵襲性を追求すべきであると考えている.

さらに今回の検討では,超高齢者群でリハビリテーション施設へ転院後の経過に関して追跡が可能であった4例のうち,自宅退院となったのは1例のみであり,超高齢者では中長期的にはADLの低下は免れず,リハビリテーション施設へ転院後の全身管理が大切であると考える.

今回の我々の検討では,厳重な周術期管理が必要ではあるが,85歳以上の超高齢者でも安全に手術可能であると考えられた.しかし,超高齢者症例では胆囊炎の重症度,CCIが高く,全身状態の不良なhigh risk群では,術後合併症発症率やCD分類III以上の重症合併症発症率が高く,術後入院期間が長い傾向を認めており,早期手術に対しては慎重に適応を検討する必要があると考える.

急性胆囊炎に対する外科的治療の成績は概ね良好で,安全に施行可能であった.ただし本検討では,発症から72時間以上経過した症例では術中出血量は増加し,合併症発症率が高く,また,85歳以上の超高齢者の緊急手術例では術中出血量の増加と入院期間の延長が認められるため,より厳重な周術期管理が必要と思われた.

本論文の内容は第74回日本消化器外科学会総会で発表したものである.

利益相反:なし

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