日本衛生学雑誌
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カドミウム投与ラットの肝臓, 腎臓および小腸粘膜上清分画におけるカドミウム結合成分
田中 慶一末田 香里
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1973 年 28 巻 5 号 p. 492-496

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抄録

カドミウムの体内挙動を検討する目的で肝臓, 腎臓および小腸粘膜の各上清成分とカドミウムの結合を正常ラットおよびカドミウム投与ラットについて検討した。
一群4匹の正常ラットおよび50, 100, あるいは200ppmのカドミウムを含む水を30日間摂取させたラットにそれぞれ109Cd溶液 (5μCi/1.37μg/体重100g) を皮下注射した。24時間後に肝臓, 腎臓および小腸粘膜をとり出し, 各ホモジネートから105,000×g上清分画を得た。各上清分画について SephadexG-75カラムによるゲル濾過を行ない, 溶出液中のカドミウム濃度, radioactivity および254mμにおける吸光度を測定したところ次の結果を得た。
1) ラット肝臓, 腎臓および小腸粘膜の上清分画中にはいずれも分子量5万以上のカドミウム結合成分(fr-1)と分子量約1万のカドミウム結合成分 (fr-2) が存在している。
2) 50, 100あるいは200ppmのカドミウム溶液を投与したラットにおいては, 特に肝臓と腎臓中のfr-2と結合した型でカドミウムが蓄積された。
3) 小腸粘膜上清中のカドミウム結合能はカドミウム投与量が増加しても著明に増大せず, 100および200ppm投与群では遊離カドミウムが検出された。
4) カドミウムの体内蓄積の多少にかかわらず, 新しく体内に浸入したカドミウムは大部分が肝臓のfr-2と結合した。
5) 肝臓, 腎臓および小腸粘膜上清中のカドミウム結合成分は蛋白質であると考えられる。

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