抄録
体重250-350gの Wistar 系雄ラットにオリーブ油に浮遊させたカネクロール400 (KC-400) をそれぞれ, 0mg (コントロール), 20mg, 200mgずつを1回経口投与し, 投与後, 3, 10, 20, 30日に甲状腺と肝を摘出し, PCBの甲状線と肝の重量に及ぼす影響を調べた。200mg投与群では明らかな両臓器重量の増加が認められたが, 20mg投与群でコントロール群との間に差違はみられなかった。
PCBを投与してから3日後に131I-サイロキシンを0.2μCiそれぞれに静注し, その後経時的に体内残留率を求めた。コントロール群と20mg投与群とでは大きな差違は認められなかったが, 200mg投与群では, 明らかに131I-サイロキシンの排泄が多かった。
PCBを投与して, 3, 10, 20日目に動物を麻酔下で開腹し, 輸胆管にポリエチレンチューブをさし込み, 胆汁を採取できるようにしたのちに, ただちに131I-サイロキシンを1匹あたり5μCiずつ股静脈より注入し, 胆汁の排泄を観察した。胆汁中への131I-サイロキシン排泄は, 200mg投与群では明らかに多く, 0-2時間後に採取した胆汁よりも2-4時間後に採取した胆汁に多く排泄された。
採取した各群の胆汁をペーパークロマトグラムで展開し, 各分画に含まれる放射能を測定した。コントロールでは131-Iサイロキシン (グルクロン酸) 抱合していないものが多かったのにくらべ200mg投与群ではグルクロン酸抱合された131-Iサイロキシンが非常に多かった。
甲状腺肥大, 131I-サイロキシンの胆汁への排泄の増加, サイロキシングルクロン酸抱合体の増加などの一連の現象は, PCBが Polycyclic hydrocarbon と同じような Hepatic microsomal inducer として活躍するためにひきおこされるのではないかと思われる。