日本衛生学雑誌
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胃がん死亡率の異なる2地域住民の腸内通過時間の比較
島田 彰夫加美山 茂利
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1978 年 32 巻 6 号 p. 712-716

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抄録

秋田県鳥海村と岩手県大迫町とにおいて,腸内通過時間(BTT),排便習性についてHintonらの方法により検討した。鳥海村は大迫町に比し,男子で6倍,女子で1.6倍の胃がん死亡率を示している。ペレットの80%以上排泄所要時間を指標としたBTTは,秋田の34.09±3.30時間に対し,岩手では43.89±4.27時間であり,100% BTTでは差はさらに拡がってP<0.05で有意であった。
排便回数はBTTと同じ傾向で,秋田では1.79±0.10回で80% BTTに達したが,岩手では2.20±0.14回で,P<0.05で有意差を示した。また岩手では排泄が分散される傾向が認められた。排便回数には差がなかったが,個体差は大であった。
排便1回当り便重量は秋田で有意に大であり,1日当り便重量にも同様な傾向が認められた。秋田のBTTと便重量との間に有意の相関が認められたが,岩手では有意ではなかった。1日当り便重量と5日間排便回数との相関は有意であったが,秋田では正,岩手では負の相関を示した。
BTTは従来,結腸がんとの関連で研究されてきたが,今後,食生態-胃がん-BTT (Bowel behavior),との関連でも追求が必要であると思われる。

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