日本衛生学雑誌
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騒音暴露に対するラット脳下垂体副腎皮質系の反応
松井 清夫坂本 弘堀尾 清晴佐藤 広文
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1978 年 33 巻 5 号 p. 693-698

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抄録

騒音暴露時の副腎皮質機能変動に関しては機能上昇と低下の所見が交錯して報告されている。それは暴露音の強さと暴露時間の差異にもとづくのではないかと推察される。本報では広帯域騒音を60, 80, 100dB (c) で8時間暴露し, その経過中の数時点で副腎重量, 副腎中11-OHCS濃度および cholesterol 濃度を測定した。また, 8時間暴露後15分間無騒音の状態においた後に15分間100dB (c) の騒音に再暴露して, 同様の観察項目の測定をおこなった。さらに, 8時間暴露終了直前にACTHまたは histamine を投与し, それらに対する副腎反応性も観察した。
次のような結果を得た。
1) 騒音暴露により副腎11-OHCS濃度は急速に上昇し, 15分で最高値に達した後ただちに低下し対照群と同一水準に復帰する。暴露がなお継続されているが, 復帰後は対照群と同様に正常日内変動リズムを示す。
2) 8時間暴露終了時点における副腎11-OHCS濃度は, 対照群および各音強暴露群間で有意の差は認められなかった。
3) 8時間暴露後15分間無騒音の状態においた後に100dB騒音を15分間再暴露すると, 80dB群では副腎11-OHCS濃度は再び上昇する。しかし, 8時間100dB暴露群では有意な上昇はみられなかった。
4) 8時間暴露終了直前にACTH投与をおこなうと, 対照群および各暴露群ともに副腎11-OHCS濃度は有意に上昇した。
5) 8時間暴露終了直前に histamine を投与すると, 対照群, 60dB暴露群および80dB暴露群では副腎11-OHCS濃度は有意に上昇するが, 100dB暴露群では上昇がみられなかった。
6) 副腎中 cholesterol 濃度は, 8時間暴露終了時頃80dBおよび100dB暴露群で有意な減少がみられた。
7) 副腎重量はすべての実験および群で有意な変化はみられなかった。
以上の結果から, 副腎皮質機能日内変動とストレス反応とでは支配中枢が異なること, 強音暴露時にはストレス反応がみられるにとどまらず中枢支配状況の異常が出現することについて考察した。

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