日本衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-6482
Print ISSN : 0021-5082
ISSN-L : 0021-5082
脳卒中死亡率と発生率の経年推移
田中 平三田中 ゆかり林 正幸伊達 ちぐさ馬場 昭美堀本 豊範岡崎 邦夫山本 博司吉川 賢太郎島田 豊治大和田 国夫庄司 博延
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 37 巻 5 号 p. 811-819

詳細
抄録
新潟県新発田市A-I地区において, 脳卒中と発生要因 (特に環境要因) に関する横断研究が実施されている。大阪府C-A地区が比較グループとして選ばれている。本報では, 研究の第1段階として, 両地区における脳卒中の頻度とその経年推移を明らかにすることにした。A-I地区における脳血管疾患標準化死亡比 (SMR) は, 近年, 減少傾向にあり, これは, ICDや診断技術の変化などの人工的要因によるのではなく, 発生率の減少によることが示唆された。しかも, この減少傾向は, 以前に脳卒中多発地区であったA-I地区の方が, 低頻度であったC-A地区よりも顕著で, 1960年代に認められた地区差は, 1970年代の後半では極めて小さくなり, 女子では逆転現象さえも認められた。このような地域較差の減少は, 両地区の属する府県, 地方レベルでも観察された。したがって, 脳卒中の発生要因に関する横断研究の第1段階として, 一時点における死亡率や発生率に基づいて, 脳卒中の多発地域と低発地域とを同定すると, 研究の成果に bias を生ずる可能性のあることが示唆された。過去の脳卒中死亡や発生のデータをできる限り収集し, 対象地域における経年推移のみならず, 当該地域の所属する都道府県や地方レベルでの経年推移を把握しておくことが大切であると考えられた。
著者関連情報
© 日本衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top