1984 年 39 巻 2 号 p. 581-586
昭和35,40,45,50年のわが国の年齢階級別平均年間脳血管疾患死亡率について,男女別々に,模型A:rij=cαiβ'jγk,模型B:rij=cαiγkexp(βjδl)の適合の良否を検討した。rijはi年齢階級j年度の母死亡率,cは定数,αi,β'j,γkはそれぞれ,i年齢階級,j年度,k出生コホートの死亡率に対する影響度を示すパラメータ(死亡特性値と仮称)で,exp(βjδl)はl年齢階級におけるj年度の死亡特性値とみなしうる。
男子では模型Aは観察データに適合しなかったが,模型Bは比較的によく適合した。女子では模型A,Bともに観察データに比較的によく適合したが,適合の程度は模型Bのほうがよかった。すなわち,観察データへの適合という見地からは,男女いずれの場合も,模型Bが年齢階級別脳血管疾患死亡率の年次推移を適切に表現しているように見受けられた。しかし,模型Bの死亡特性値の推定値を検討すると,この模型が年齢階級別脳血管疾患死亡率の年次推移の成り立ちを正しく説明しているか否かについて多少の疑問が残る。