1984 年 39 巻 5 号 p. 841-847
腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒および,ブドウ球菌エンテロトキシンの共存時における致死毒性の発現に対して,その救命方策を求めて,ラットを用いた治療実験を行った。
耐熱性溶血毒5μg/kgおよびエンテロトキシン25μg/kg混合投与時のラットは全例斃死し,塩化カルシウム,エピネフリン,ドーパミン,β-メサゾンあるいはテオフィリンの,どの薬剤の単独あるいは組み合わせにおいても,致死率を低下させることは出来なかった。
耐熱性溶血毒ウサギ免疫抗毒素血清を,毒素注入後,比較的早期に静注することにより,抗毒素0.5mg/kgで,6頭中1頭を,抗毒素1.0mg/kg投与で6頭中3頭の生残を得ることが出来た。
また,抗毒素0.5mg/kgに加えて,テオフィリン40mg/kgを腹腔内注射すると,50%の生残を見ることが出来,抗毒素1mg/kgおよびテオフィリン40mg/kgを投与すると,全例の生残を認めた。