日本衛生学雑誌
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アルコール投与マウスのF1胎仔における染色体異常発生
小池 雅彦
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1985 年 40 巻 2 号 p. 575-585

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抄録

母親の飲酒が胎児におよぼす細胞遺伝学的影響について動物実験モデルで検討した。実験には生後10~14週の成熟処女マウスを使用し,0%,10%,20%,40%のアルコールを妊娠前4週間と妊娠期間中に,固型試料とともに自由に摂取させ,その摂取量を測定した。交尾栓をみた日を妊娠0.5日として,妊娠10.5日目に開腹し,胎仔を回収した後,直接法で染色体標本を作製し,盲検的に分析した。
アルコール投与4週間後の母獣体重の平均増加量は,40%群でのみ著明に減少した。胎仔に対する影響では,投与量の20%群まで,着床数,吸収胚数などに変化をみなかったが,40%群でのみ吸収胚数の増加,胎仔の発育不良を認めた。染色体の数的異常は,40%群で85匹中1匹(1.2%)の胎仔で40/41 mosaicの異常を認めたのみであった。ギャップや切断などの構造異常は,アルコール濃度の上昇とともに,その頻度が増加した。ここで染色分体型のギャップまたは切断を1個以上有する細胞の頻度は,0%群73/504(14.5%),10%群89/528(16.9%),20%群125/558(22.4%),40%群135/510(26.5%)と投与アルコール濃度の上昇にともない増加傾向を示したが,これに比べ,イソ染色分体型異常では,0%群は12/504(2.4%),10%群16/528(3.0%),20%群40/558(7.2%),40%群91/510(17.8%)と高濃度においてより強い増加傾向を示した。なお,動物が実際に摂取したアルコール量で染色体構造異常発生状況をみたが,この関係をより強調する結果であった。

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