2006 年 32 巻 3 号 p. 258-262
いわゆる気管支縦隔リンパ本幹は,右側に3本以上,左側に2本以上存在する。右側では,鎖骨下・総頸動脈間および右腕頭静脈の浅側および深側を上行する。左側では,総頸動脈・大動脈弓の前方を通る上群と,気管分岐部近傍で胸管に直達する下群に分かれる。これらの本幹を高頻度に放つことから,多くの縦隔リンパ節は,当該ドレナージ域におけるN3あるいは最終介在リンパ節と言うことができる。頸部の癌が縦隔のリンパ節に転移する理由としては,1)気管前リンパ節と腕頭静脈角リンパ節を結ぶ太いリンパ管,および2)不完全な弁と節内シャントによるリンパの逆流が考えられる。食道では粘膜下リンパ管が早期跳躍転移を起こす。下頸部・縦隔の筋膜については,組織学的実体があるかdissection artifact(人為的操作の産物)なのか-という検証がほとんど行われていない。