抄録
頭頸部癌治療における動注化学療法は,特に放射線併用により優れた抗腫瘍効果を有するが,一方で重篤な合併症も報告されており,今後は全身的な副作用が少なく安全な治療が要求されている。われわれは新しい動注化学療法としてドセタキセル(TXT),シスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP)と5-FUによる多剤併用動注化学療法(TCPF動注化学療法)を考案し,その有効性と安全性を検討した。口腔扁平上皮癌29例を対象とし,全症例に浅側頭動脈または後頭動脈経由で動注用カテーテルを留置した。投与方法はTXT 15 mg/m2:day 1-5 持続動注,PEP 10mg/body:day 6-10持続動注,TXT 7-15mg/m2:day 3動注,CDDP 15-30mg/m2:day 4動注,5FU 250mg/body/day:10日間持続静注を1クールとし,2クール施行例は4週後に行った。局所進行例・頸部転移例(7例)に限って放射線治療を併用した。25例は動注終了後に生検切除または根治的切除を行った。原発巣の効果はCR率79%(23/29),PR率21%(6/29),pathological CR率56%(14/25)であった。副作用は脳血管障害はなく,grade 2-3の粘膜炎と動注側の脱毛が主であり,全身的な副作用はほとんど認めなかった。本療法の有効性と安全性は高く,高齢者などハイリスクの症例にも根治性が高い治療として適応し得ると考えられた。