頭頸部癌
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頭頸部癌における分子生物学の貢献
頭頸部がんにおける分子生物学の貢献
大西 武雄家根 旦有太田 一郎
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2006 年 32 巻 3 号 p. 342-348

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抄録

我々は,頭頸部がん治療の先行指標として,癌抑制遺伝子p53の機能解析を行ってきた。p53は細胞周期の停止,アポトーシス,DNA修復などの機能を制御することによって,発がんとがん治療の両方において重要な役割を担っている。p53遺伝子の異常は高頻度にみられ,悪性腫瘍の約半数に認められる。p53遺伝子に異常を持つがん患者の治療効果は低く,変異型p53細胞やp53欠損細胞は正常型p53細胞に比べて放射線や抗がん剤の感受性は低い。そこで,我々は放射線と抗がん剤に対するp53の細胞応答について検討を行った。変異型p53細胞には,変異型p53タンパク質の立体構造を変化させてp53の機能を正常に回復させる目的で,グリセロールを化学シャペロンとして用いる方法を試みた。一方,炭素線などの重粒子線は,変異型p53細胞やp53欠損細胞でも十分な効果が得られた。すなわち,重粒子線はp53の遺伝子型に関わらず効果が得られるものと考えた。これらの基礎的研究から,p53分子は遺伝子の安定性において発がんに関与し,また治療の先行指標としてがん治療にも重要であることを明らかにした。

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© 2006 日本頭頸部癌学会
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