耳下腺手術後のFrey症候群の発症を予防するために,胸鎖乳突筋弁などで露出された耳下腺実質を被覆する方法が従来から行われてきたが,それでも一定の発症は見られる。今回われわれは,Frey症候群予防のために,新しい概念である被膜下耳下腺手術を行った。被膜下耳下腺手術とは,皮膚と耳下腺浅葉被膜の間を剥離せずに被膜下のレベルで皮弁を挙上することにより,汗腺に分布する交感神経を温存して術後の神経の過誤支配を予防する術式である。対象は2008年1年間に当科で手術を施行した耳下腺良性腫瘍新鮮例27例のうち,被膜下耳下腺手術を行い術後6ヶ月以上の経過を観察できた23例である。病理組織別では,ワルチン腫瘍が12例,多形腺腫が10例,嚢胞が1例であった。術後にFrey症候群を発症した症例は1例も認めず,予防率は100%と非常に良好な結果であった。