抄録
1975~2008年までの腺様嚢胞癌(ACC)剖検症例10例と,同時期の扁平上皮癌(SCC)剖検症例とを比較した。
ACCの部位は硬口蓋3例,下顎骨2例,上顎歯肉1例,舌1例,舌下腺2例,顎下腺1例で,一次症例6例の病期分類はstage I ;1例,stage II;3例,stage IV;2例であった。
ACCの死因は6例が原発巣死,4例が遠隔転移死で,頸部転移死はなかった。また,ACC一次症例の平均生存期間は7年5ヶ月で,SCC 125例の2年2ヶ月に比して長かった。頸部リンパ節転移はACCが30%,SCCが65.6%でありACCは低かった。遠隔臓器転移はACCが肺転移を全例に認めたが,SCCは44%であった。
ACCは既知の如く,びまん性かつ浸潤性の進展様式を持つ。転移様式は遠隔臓器転移とくに肺転移が多く,原発巣非制御や肺転移を生じても,SCCに比して担癌状態が長期に亘るという臨床的な特徴があった。