抄録
【目的】舌癌術後の構音障害と周術期リハビリテーションに関連した報告は少数である。本研究では,周術期リハビリテーションを行い,構音機能の経時的な変化を検討した。
【対象・方法】当院で舌切除術後に構音・嚥下リハビリテーションを実施した10症例(全摘1例,亜全摘7例,半側切除2名)を対象とした。術前,術後および退院時(リハビリテーション終了後)に音声データを収録し,音響解析によって,母音/a/,/i/,/u/の第1・第2フォルマント周波数(F1:舌の上下運動,F2:舌の前後運動)およびTriangle vowel space area(tVSA:舌運動の総合的指標),単語復唱課題にて連母音/a/,/i/,/u/間のF1,F2の変化率(Formant slope)を分析した。
【結果】術前より術後では,tVSA縮小,Formant slope低下を認め,術後から退院時(リハビリテーション終了後)では両者ともに術前の数値へと改善傾向にあった。
【考察】舌癌周術期の構音障害において,残存する構音器官が賦活化し,舌切除後に縮小した舌運動範囲が拡大する可能性を有することが音響学的特性の変化より明らかとなった。