局所早期舌癌は機能温存の観点から原発巣を経口腔からのみ切除を行ない,必ずしも頸部郭清組織とは一塊切除とならないことが多い。故に口腔底組織は無治療な領域となり,ここに制御・救済困難な後発再発を来す例が報告されている。この領域は「舌骨傍領域」とし称される。当科における局所早期舌癌の根治術後例で,2例を連続して経験したので報告する。症例は2例とも79歳の男性で,いずれも舌縁左側の扁平上皮癌,cT2N0M0であった。舌部分切除術と左肩甲舌骨筋上頸部郭清術を行い,根治切除し得た。しかし,術後それぞれ8ヶ月,7ヶ月で舌骨傍領域に再発を来たし,放射線治療を行うも再発確認後6ヶ月,3ヶ月で原病死した。舌骨傍領域での再発は約6.3%(当科は5.6%)で,舌下神経や舌動脈を巻き込むように喉頭・副咽頭に伸展し,救済治療困難であるとされる。当科では初めての経験であり,やはり救済困難であった。今後は危険因子の解明や予防的治療の検討が課題である。