抄録
白血球はその起源により,リンパ球を主とするリンパ系と,顆粒球・単球・マクロファージ等を含む骨髄系に大分される。本reviewでは,頭頸部癌における骨髄系細胞の動向と骨髄系細胞を標的とした免疫療法を概説する。骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は単球にまで分化できない未熟な細胞であり,強力な免疫抑制作用がある。我々は頭頸部癌患者において,PD-L1やTGF-βを介したMDSCのT細胞機能や増殖の抑制を報告した。ビタミンによる分化,抗癌剤,免疫チェックポイント阻害薬,さらには新規分子標的薬や既存薬剤による,MDSCの制御が近年期待されている。
マクロファージは免疫刺激性のM1と抑制性のM2の亜群に分かれ,癌組織周囲の腫瘍関連マクロファージ(TAM)にはM2が多く含まれる。現在M2の産生する抑制性サイトカインを阻害する薬剤や,TAMを遊走させるケモカインを阻害する臨床試験が多数進んでいる。一方で癌細胞はマクロファージに対する“Don’t eat me”シグナルCD47を発現し,マクロファージによる貪食から逃避する。近年我々はさらに舌癌におけるCD47高発現は予後不良因子であり,CD47阻害により頭頸部癌細胞の貪食が促進されることを報告し,海外では臨床試験が進んでいる。