抄録
基底細胞腺癌は唾液腺悪性腫瘍の約3%と比較的稀な腫瘍である。そのうち,9割以上は,耳下腺をはじめとする大唾液腺由来であり,硬口蓋の小唾液腺に由来する基底細胞腺癌は極めて稀と考えられる。症例は,63歳女性。主訴は,左頬部腫脹。当科受診の約6ヶ月前から左頬部腫脹が出現した。近医で基底細胞腺癌と診断され当科を受診した。左頬部の腫張と硬結,歯肉まで進展する硬口蓋左側の隆起性病変を認めた。画像検査で上顎骨の骨破壊を認め,頬部皮下,眼窩下壁まで浸潤していた。上顎全摘術に加え,頬部皮膚,眼窩骨膜を合併切除し,血管柄付き腸骨内腹斜筋弁で再建した。術後,頬部皮膚壊死をきたしたため,正中前額皮弁で再建した。現在まで明らかな再発はなく,咀嚼機能,嚥下機能,構音機能,視機能は良好で,整容面でも患者の満足を得られている。