抄録
口腔がんの術後には解剖学的構造の変化や筋力の低下により,様々な機能障害が生じる。特に上顎欠損は口腔と鼻腔・副鼻腔が交通するため咀嚼・嚥下・発語に障害を及ぼし,患者のQOLを著しく低下させる。このような症例に対して,従来から顎義歯が使用されてきたが,欠損状態や口腔内の環境によって機能回復の程度は異なる。
今回,2014年から2021年までの7年間に上顎顎義歯を作製し,各種機能評価を実施することができた上顎欠損症例20名(平均年齢69.1歳;男性11名,女性9名)を対象に,咀嚼・嚥下・構音機能に関して検討した。
各種機能評価において,残存歯数や欠損状態など様々な因子によって機能回復の程度は異なっていた。
顎義歯の使用は術後の機能回復に貢献し得るが,主観的評価および客観的評価を含め多覚的な評価が必要であり,様々な症例に対して統一して使用できるような各種機能評価の検討が必要と考える。