抄録
経上顎洞的手術を施行した6例の上咽頭腫瘍, もしくは隣接部位から上咽頭へ進展した腫瘍症例について, 経上顎洞的切除が可能な範囲を検討した。症例は上咽頭腫瘍3例 (扁平上皮癌T2N1: 1例, 腺様嚢胞癌T1N0: 1例, 若年性血管線維腫: 1例), 硬口蓋腺癌1例, 鼻腔軟骨肉腫1例, 下垂体腺腫1例で, CT・MRIで腫瘍の進展範囲を確認した。術前に, 癌症例は照射および化学療法を, 若年性血管線維腫症例は顎動脈塞栓術を施行した。経上顎洞的に到達し得た部位は次のとおりである。上咽頭後壁から斜台, 椎前筋群・椎前靱帯, 同側の上咽頭側壁, 翼状突起 (正円孔・翼突管), 耳管軟骨, 翼突窩, 副咽頭間隙, 対側の上咽頭側壁, 耳管隆起, 咽頭陥凹など。