抄録
中咽頭癌の治療は, 中咽頭の解剖学的複雑さと治療後の機能障害の点から, 治療法の選択に迷うことが多い。そこで1985年4月から1996年3月まで当科で入院加療を行った中咽頭扁平上皮癌62例中一次例52例について検討した。その結果一次例中40例に根治的治療を行い, その5年生存率は65.0%であった。治療法別の予後には有意差を認めなかったが放射線療法を行った早期癌7例中4例に再発を認めたことより, 早期癌に対して放射線療法を第一選択とすることは再考を要すると思われた。進行癌においてT1・T2症例では長期生存の可能性が高く, T3・T4症例では局所の拡大切除を検討すべきと思われた。重複癌は52例中11例(21.2%) に認め, 治療に当たっては頭頸部領域, 上部消化管の精査が必要と思われた。