1997 年 23 巻 3 号 p. 637-643
下顎歯肉癌36例について検討を行った。辺縁切除, 区域切除, 下顎半側切除の選択は次のような基準で行った。すなわち, 1. 下顎歯肉あるいは皮質骨に腫瘍が限局している場合には, 辺縁切除を行い, 骨の安全域を2cmとする。2. 下顎歯槽部に腫瘍の浸潤がある場合には区域切除を行う。3. 下顎管周囲に腫瘍が浸潤している場合には下顎半側あるいは関節突起基部までの切除を行う, である。これらの原則に従い下顎の切除を行い, 辺縁切除4例, 区域切除25例, 半側切除2例, 亜全摘5例であった。局所再発例は全例区域切除症例で, 1981年~1988年までの12例中5例に, 1989年~1995年までの24例中3例に局所再発が見られた。術後機能は辺縁切除症例では殆ど発音や咀嚼障害は認められなかった。区域切除, 半側切除, 亜全摘症例のうち22%の患者は常食の摂取が不可能であったが, 会話明瞭度では殆ど障害がなかった。
これらのことから十分な安全域を含んで区域切除を行い, 骨と軟組織の確実な再建を行う事で, 良好な予後と術後機能が得られると思われた。