抄録
咽頭欠損後の空腸移植に際し, 我々は, 空腸のどの部分でも縦切開が血行面で可能なことを確認した後, 簡便な移植方法を開発した。咽頭の欠損型を切上型, 水平型に分類した。吻合血管側に腸管膜側を対応させ腸管を設定した後, 切上型では切上部位の反対側に, 水平型では空腸の前方に縦切開を行い口径差をあわせて咽頭空腸吻合を行う。本術式を54症例に行った。切上型は26例で水平型は28例であった。口径差の最大は16cm, 縦切開の最長は8cmであった。切上型では耳管隆起部直下に及ぶもの, 水平型には舌喉頭全摘症例もあった。どの症例においても咽頭頸部食道は直線に近い形で再建された。5例 (9.2%) において口側に minor lekage を生じた。従来報告されてきた方法と比べ, 簡便であり, 頸部左右どちらの血管も選択可能で, またほとんどの咽頭欠損に対応でき非常に有用であると考えられた。