2000 年 26 巻 3 号 p. 411-416
進行舌癌の外科的治療では舌全摘・亜全摘を選択せざるえないが, その際喉頭を温存するかどうかは患者のQOLにとって極めて重要な問題である。可能であれば喉頭を温存したいところであるが, 術後の誤嚥や嚥下障害が生じると, 喉頭全摘よりもQOLは低下する。我々は舌全摘・亜全摘の際, 以下が喉頭温存可能な条件であると考えている。1) 患者が70歳以下であり, 高い知的レベルと会話に対する強い意欲があること。2) 喉頭蓋が温存でき, 再建材料と縫合が可能であること。3) 下顎の区域切除は併用しない症例であること。4) 喉頭は下顎直下まで挙上すること。
一方, 下咽頭癌に対しては最近ステージの進んだ症例にも喉頭温存の適用が拡大されつつある。我々は, T2以下の症例で後壁型ないしは梨状陥凹型は, 喉頭を温存すべきと考えているが, 適応の限界に関しては今後の検討が必要と思われる。
具体的にこれら2例の症例を呈示し, 治療方法, 経過について報告する。