魚類学雑誌
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ヒラメ類の稚仔魚の研究―I.イトヒキガンゾウ
尼岡 邦夫
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1970 年 17 巻 3 号 p. 95-104_1

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抄録

日本近海の各地から採集された5個体のヒラメ類の後期仔魚および稚魚を調査した.これらは1種類の一連の発達段階のものであり, 非常に大きく (体長58~81mm), ほとんど円形であること, 尾舌骨の縁辺に多くの鋸歯をもつこと, 腰骨の後方突起は板状でその下縁に多くの鋸歯をもつこと, 頭部に3本の棘をもつことおよび右側の腹鰭第1軟条は左側の第2軟条部附近から始まることなどの特徴で, ダルマガレイ科 (Bothidae) の他の種類の稚仔魚から明らかに区別される.
このような仔魚は黒沼 (1942) によって, 変態初期の1個体をBothus bleekeri Steindachnerとして同定され, 記載された以外に報告されていない.ここで調査した稚仔魚は背鰭条数, 唇鰭条数および脊椎骨数などの形質から, イトヒキガンゾウTaeniopsetta ocellata (Günther) と同定され, 形態的な違いによって次の4段階に分けられる。
変態初期: 眼は体の両側にあり, ほとんど左右相称的な位置をしめる.鱗, 側線および色斑は発達しない。変態中期: 眼は頭部の背辺に達し, その前上部に吻突起を形成する.体側に眼径大の眼状斑や斑紋が存在する.変態後期: 右眼は完全に移動を終る.吻突起は消失する.鱗, 側線は発達する.稚魚期: 頭部, 胸鰭および体色など良く発達する。

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