魚類学雑誌
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日本産フナの筋肉蛋白の電気泳動像にみられる種間および種内変異
谷口 順彦石渡 卓
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1972 年 19 巻 4 号 p. 217-222

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抄録

日本産フナの有効な分類基準を得るため, それらの水溶性筋肉蛋白をセルロースアセテート電気泳動法により分析した.筋肉蛋白の電気泳動像は通常出現する四つの組成の濃度比により三つの型に分けられた.キンブナ (Carassius buergeri buergeri) およびニゴロブナ (Carassius buergeri grandoculis) は組成1の濃度が20%以上を示す (タイプI).このタイプはさらにA, ABおよびBの三っのサブタイプに分けられる.これらの変異の出現度数はHardy-Weinbergの法則で期待される比とよく一致し, 一つの遺伝子座の二種類の対立遺伝子によって支配されていると推定された.また, この変異の出現率はキンブナとニゴロブナで著しく異っていた.ギンブナはタイプIIを示し, 著しく高い濃度の組成2 (70%以上) により特徴づけられる.
ゲンゴロウブナでは組成2と組成3の濃度がほぼ等しく, 組成1と組成4の濃度が著しく低い (タイプIII).このように筋肉蛋白の電気泳動像は日本産フナの分類基準として有効であり, フナ類の種分化に関する研究に役立つと思われる.

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