魚類学雑誌
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メナダの消化系特に胃幽門部の器官形成
福所 邦彦
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1972 年 19 巻 4 号 p. 283-294

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抄録
ボラ科魚種メナダの人工ふ化仔魚を飼育して, 主として胃幽門部 (gizzard) の発達時期と発達過程について観察した. メナダの胃幽門部は胃腺を欠くが, 噴門部と盲嚢部は胃腺を具える. 近縁種のボラとセスジボラの胃盲嚢部も胃腺を具える. メナダは種固有の腸型を有し, その腸型は全長30mm (ふ化後50-60日) で完成する.
成魚の腸型を10型とし, ふ化時の腸型を1型とすれば, 1-10型はそれぞれ消化系の発達の各段階を示す指標となり得る.メナダの胃盲嚢部原基は, 腸型が4型から5型に移行する間, すなわち全長6.2mm (ふ化後11日) に生じ, その粘膜上皮下には胃腺が発達し始める. gizzardは5型 (全長9mm, ふ化後20日前後), すなわち胃がいわゆるト型を示した後発達を始め, 幽門垂の分化と平行して幽門部の筋肉層が徐々に肥厚して, 6型 (全長11.0mm, ふ化後27-28日) で完成する.gizzardが形成され始めるころから, 飼育中のメナダは游泳層を表層から底層へ移行する.少くともメナダにおいては, 後期仔魚期以後は, 諸器官の発達程度を表す尺度としてはふ化後日数より体長を用いる方法が妥当である.メナダの種苗サイズは全長30mm以上と考えられる.
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© 日本魚類学会
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