魚類学雑誌
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サケ科魚類の口腔にある分類形質に就いて
野村 稔
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1953 年 2 巻 6 号 p. 261-270

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抄録

(1) 日本産サケ科魚類3屬・8種 (Table 1) の口腔内の各骨及口腔上壁の鋤骨や口蓋骨部の各隆起等を比較観察し、それらのうちで何れが屡及種の分類形質となり得るか、又これら分類形質によつてどの程度サケ科魚類が分類し得るかを槍討た。
(2) 口部骨格で各魚種の特徴を比較的表わしているのは鋤骨と舌骨であつて、口部骨上の歯は産卵期に於ける脱落多く、又年令増加によつて歯数も異り、歯数の個体変異は他種の変異と重なり合い種の分類形質とはなり難い、 (Figs.2, 3) 。
(3) 隆起配置、各部の隆起の形態、口蓋膜の様子及口蓋骨部隆起と鋤骨部隆起の口腔上壁先端に於ける接續状態では、年令増加による變化、雌雄による変化及個体変異は認められなかつた (Plates 1, 2, 3) 。これら形質はサケ科魚類の屡及種の分類形質とすることが出來る。
(4) 屡の分類は隆起配置のみでし得る。即ちサケ屡の隆起配置は小字型を (Fig.1 A~D) 、ニジマス屡はT字型を (Fig.1 E, F) 、イワナ屡はM字型をしている (Fig.G, H) 。
(5) サケ屡及イワナ屡の各種は鋤骨部及口蓋骨部隆起の形態や接續状態及口蓋膜の形態により分類することができ、ニジマス属の各種は上顎主骨及口蓋骨上の歯の大きさや生え方の粗密を上記の分類形質と共に用いれば分類することが出來る (Fig.1, 檢索表参照) 。

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