抄録
人工ふ化・育成したイシダイの体側斑紋 (7本の横帯) の形成過程を調べた、形成の様式は天然採集個体について調査した場合の既京とほぼ同一で, その発達は体長に相関することが確認された.まず, 背鰭棘部の中央よりやや後方の基底と肛門の後端を結ぶ線より前方が黒色化する (全長8.1~9.1mm).第1帯一第3帯の上方部が融合した状態で現れ, やがて各帯は分離独立する (9.1~10.0mm).第3帯に連続して発達した黒色素胞の分布帯は, 分離独立して第4帯になる (11.1~12.0mm). 第5帯~第7帯は共通の大斑として現れ, 大斑が第4帯より分離し, 同様にして第5帯が形成され (16.1~17. 1mm), ついで第6帯と第7帯が分離独立し, 全7帯が完成する (18.0mm). 水温18.5~23.7℃で飼育した場合には, 斑紋の形成はふ化後約20日に始まり, 同27~35日に完成する.
イシダイの人工採苗における稚魚の飼育管理の基準としては, ふ化後日数ではなく体長を採ることが妥当であり, 体長と相関して発達する斑紋の特徴が飼育指標として用い得る. 飼育経験上, 全長12mm前後から魚肉に餌付けるとその後の成長が良好であることが判明しているので, 第4帯形成時を餌付け開始の指標とすることが可能である.