ドンコの産卵行動の水槽内観察により, 5っの基本的動作を区別し, それらの出現頻度を産卵行動の進行過程に沿って記録した.その結果, 営巣中の雄は雌の接近により頻繁なfanning, upside-down movement, beatingを行い雌を巣中に誘いこむ.番いを形成すると雌雄は頻繁なupside-downmovement, weaving, quiveringを行い, 産卵する.産卵後の卵を保護中の雄には主にfanningとweavingが認められ, 両動作とも産卵後頻度は減少するが, 仔魚のふ化時に再度増加した.雄親魚によって保護されていた卵塊では, そうでない場合と比較して, 水生菌に侵された死卵がなく, また多数の死卵が落下することから, 雄親魚の巣中でのfanningとweavingは死卵を卵塊からかき落すことにより卵全体が水生菌によって侵されるのを防ぐ役割を持っているのではないかと示唆された.