抄録
カジカ科に属するイソバテングウは頭部に11本のひげをもっている.各ひげは表皮, 真皮および支軸の3部からなる.表皮層には終末球のほかに, 顆粒細胞および先端のとがった長円筒形細胞がみられる.ひげ内部の支軸は弾性軟骨からなるように考えられたが, 今回の観察からは決定できなかった.上記のひげのほかに, あまり目立たない短かいひげや, 極めて短かいひげ様突起が頭部に認められる.これらの組織構造は, 上述のひげのそれとほぼ同じである.この魚のひげは, その構造からBaecker (1926) のfiexible typeに属する.この魚のひげは随意的に動かされなく, 索餌などの活動において, ナマズやヒメジのひげ程には, 顕著な働きをしないのであるまいかと推測される.