魚類学雑誌
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卵黄吸収時におけるクロソイ胎仔の卵黄多核質の微細構造
清水 幹博山田 寿郎
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1980 年 27 巻 1 号 p. 56-63

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抄録
出産間近のクロソイSebastes schlegeli胎仔の卵黄多核質を電顕で観察し, 卵黄吸収時における卵黄多核質の機能を考察した.
クロソイ胎仔の卵黄は一つの大きな均質塊で油球を含み, 腹部中央に位置する卵黄嚢内に存在する.卵黄塊はその全表面を卵黄多核質によって直接おおわれ, 多核質の外表面には血管が分布している。多核質と卵黄塊との境界域には卵黄塊から分離した多くの卵黄小顆粒が認められ, 卵黄多核質は微細構造的に二つの部域に区分される.一つは滑面小胞体が広く密に分布し, 糸粒体およびグリコーゲン顆粒に富む部域であり, 他の一つは粗面小胞体およびゴルジ装置がよく発達している部域である.前者は脂質および糖質代謝に関与し, 後者は蛋白質代謝に関与していると考えられる.また, 卵黄多核質の外表面が血管と接する所では, 細胞膜が入り組んで複雑な構造を呈している.特に静脈洞と接する部位では, 血管内皮は未発達で血液および血球が直接多核質に接し, 特異な空胞様構造が認められた.
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© 日本魚類学会
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