魚類学雑誌
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カムルチーの空気呼吸行動
石松 惇板沢 靖男
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1981 年 28 巻 3 号 p. 276-282

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抄録

カムルチーの空気呼吸行動は鰓蓋の外転により始まる.吻端が水面に到達する以前にこの外転は開始され, この時魚体は水面に対して30~40度の角度に保たれている.吻端が水面に到達した後にもこの外転運動は持続し, 続いて口腔が拡張する.次いで口が開いて呼息運動が始まり, 口腔が収縮し, 鰓蓋が急速に内転する.次に再び口腔が拡張し, 吸息運動が開始される.やや遅れて鰓蓋が外転するが, この時外鰓孔は鰓膜により閉じられている.口が閉じ, 吻端が水面を離れた後鰓蓋が内転し呼吸運動が完了する.呼息および吸息運動共に約0.2秒を要した.空気呼吸器官内のガスを分析した結果, 呼息に際して空気呼吸器官内のガスはほぼ完全に呼出される事が判明した.魚を空気中に置いた場合, 空気呼吸頻度は顕著に上昇し, 換気効率が低下した.これらの事実から, カムルチーが空気呼吸をする際には, 呼息時に空気呼吸器官内のガスが外鰓孔より浸入した水によってほぼ完全に置換され, 続く吸息時にこの水が吸気によって置換されているものと推測した.

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