抄録
ウグイ稚魚における脊椎骨異常の発現率および発現機序について検討した.18℃および25℃恒温条件下で人工孵化した稚魚の脊椎骨数は22℃の時よりも明らかに増加していた.一方, 18℃および25℃で灯靴した稚魚 (鮮体長11~18mm) における脊椎骨異常の発現頻度は33~35%で22℃の時の約4倍であつた.しかし, 22℃の場合には約9%で自然河川の場合とほぼ同じであった.主要な脊椎骨異常は椎体の螺旋状縫合であり, その出現頻度は18℃および25℃で孵化した稚魚において24~26%で22℃の時の約4倍であった.脊柱のほぼ中央部に集中しているこれらの異常椎体は, 体長18mm以上 (孵化後3ケ月以上) に成長すると螺旋状縫合が部分的にゆ合し始め, 始めはその縫合線が明瞭に確認されるが, やがてそれも消失して他よりも長く2~4本の過剰棘を有する脊椎骨となる.体長約24mm以上に達すると螺旋状縫合は全くみられず, 前時期における螺旋状縫合と同程度の頻度で, しかも同じ場所にゆ合椎体が認められた.すなわち, 椎体の螺旋状縫合の出現条件は脊椎骨数の増減の原因となる条件と深く関連しているものと考えられ, さらに, これら螺旋状縫合は稚魚期におけるゆ合椎体の発現の主要な誘因の一つであることが判明した.