魚類学雑誌
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日本産ウバウオ科魚類の2新属, 2新種の記載, および頭部感覚管系について
塩垣 優道津 喜衛
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1983 年 30 巻 2 号 p. 111-121

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抄録

九州西方沖合の男女群島女島産のウバウオ科魚類の2新風2新種および日本ではあまり知られていないホソウバウオの記載を行った.Propherallodus gen. nov., Pherallodichthys gen. nov.はそれぞれ, Propherallodus briggsisp. nov., Pherallodichthys meshimaensis sp.nov.を模式種として記載し, 2新種にはそれぞれ新称ヒメウバウオ, メシマウバウオを与えた.新属ヒメウバウオ属は先端が丸い門歯が両顎に1列に並ぶこと, 眼前感覚管, 前鯉蓋感覚管の開口数がそれぞれ2, 3であり, 下顎感覚管が消失していること, 新属メシマウバウオ属は両顎歯とも1列の門歯からなり, 上顎側部のそれは先端に後方に向う鈎状突起を具えること, 眼前感覚管, 前鯉蓋感覚管の開口数がそれぞれ2であり, 下顎感覚管が消失していること等の特徴を有する.南アフリカ産のPherallodus smithiをヒメウバウオ属に移し, 同属2種の検索を与えた.
ウバウオ科魚類の頭部感覚管系について, 既知の10種 (うち2種については一部) の他に, 新たに18種を追加し, 全亜科にわたる各感覚管の開口数について, 資料不足の段階ではあるが検討を加えた.同感覚管の退化は一部のものでは, 従来ウバウオ科の特化形質であるとされた鰓膜の峡部への付着, 歯の特化, 複吸盤から単型吸盤への特殊化, 腰帯と下後鎖骨との関節部の特殊化等を伴なわないで進行しており, ウバウオ科内で吸盤の退化傾向を示すものと, さらに特殊化へ向うものの2つの大きな系統の存在が想定された.さらに, 同属内の各種間の感覚管の開口数については, 原則的には同一であることは確かなことと考えられ, 属を識別する場合の一つの有効形質となり得ると考えられた.

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