尾鷲沖から得られた標本に基づき, 新種Epigonus ctenolepisナガヤセムツを記載した.本種の形態的特徴は, 体が側扁していること, 主鯉蓋骨に強い一棘があること, 8番目の肋骨がないこと, 背鰭軟条数が10であること, 側線鱗が櫛鱗であることなどであり, これらの組合わせにより, 同属の他種と容易に区別される.さらに, E.atherinoidesヒラヤセムツが, 九州・パラオ海嶺中の駒橋海山から得られた標本に基づき, 記載された.本種はこれまでハワイとフィリピンより報告されているもので, その形態的特徴は, 胸鰭基底部における体高は体幅より大きくないこと, 側線鱗が円鱗であること, 第2背鰭軟条数が10であること, 第8番目の肋骨がないことなどである.
以上の結果に基づき, 日本産の既知種E.pectiniferヤセムツとE.denticulatusハゲヤセムツを加え, 日本産本属魚類4種の検索表を作成した.