魚類学雑誌
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キオビスズメダイのmobbing行動
Terry J. Donaldson
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1984 年 31 巻 3 号 p. 345-348

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抄録

鳥類で古くから知られていたmobbing行動が, 魚類でも最近明らかにされつつある.魚類のmobbingは捕食者の周囲に群らがる行動と定義されている.mobbingは捕食者の存在を知らせ, 追い払うために行なわれると考えられている.mobbing行動は主として巣を形成する魚類に見出されている.
Guam島のスズメダイ科魚類の種間関係の研究中に, キオビスズメダイのmobbing行動が観察された.観察を行なった際に本種は巣を形成していなかったが, サツマカサゴとドクウツボに対してmobbing行動を示した.
2尾のサツマカサゴがなわばり内に侵入すると1尾のキオビスズメダイがなわばり内で上昇し, 侵入者の背後や側方から接近した.この間に2~5尾のキオビスズメダイが加わり, 体側面を誇示したり, 体をふるわせたり, 背鰭をたてたり, 尾鰭を振りながら回転したり, 侵入者の頭上を横切ったりした.侵入者がなわばり外へ去ると, キオビスズメダイは追跡はしなかった.
ドクウツボに対しては5尾のキオビスズメダイがmobbing行動を示した.ドクウツボの頭部背面や側面を10cmの距離を保って何回も通過した.この際, 口の周囲は通らなかった.体をふるわせたり, 背鰭をたてたり, 体側面を誇示する行動も観察された.

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