魚類学雑誌
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マダラタルミ属 (スズキ目, フエダイ科) の分類学的再検討
岸本 浩和尼岡 邦夫河野 裕美浜口 拓也
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1987 年 34 巻 2 号 p. 146-156

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抄録

従来, フエダイ科のマダラタルミ属はマダラルミM. nigerの1種からなるmonotypic genusと考えられ, M. macularisはそのシノニムとされてきた.M. macularisはFowlerにより2種混合の成魚標本にもとづいて原記載され, 完模式標本 (USNM89996) の所在は不明であるため, その有効性を検討することはできなかった.著者らは本属に明らかな2種を認めたことから, 2種混合の副模式25標本の中からUSNM145811をM. macularis (ホホスジタルミ, 新称) の新模式に指定し, 有効種としたうえで両種の再記載と比較を行なった.両種は次のような諸点で区別される.鯉耙数はホホスジタルミでは110-122で, マダラタルミでは89-107.前者の主上顎骨の露出部は後者より狭い.前者の腹鰭は幼期に著しく長く, その先端が鋭く尖るが, 後者では終生長くなく, 先端は円い.前者の成魚では頭部と垂直鰭に青い斑点をもつが, 後者ではほぼ一様に黒い.ホホスジタルミはオーストラリア北部から西表島に至る西部太平洋に分布し, マダラタルミは南アフリカからマーシャル諸島に至るインド・太平洋域に広く分布するものと考えられる.

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