魚類学雑誌
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カンキョウカジカ雌の生長と成熟年令, および生活史変異
後藤 晃
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1989 年 36 巻 1 号 p. 90-99

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抄録

北海道南部の大当別川において, 河口から上流約6km地点までの流域にほぼ等間隔に7つの調査区域 (St.) を設けた.各St.で採集されたカンキョウカジカの雌成魚 (体長50mm以上) に個体識別を施し, mark-recapture法によって, 各St.毎に同一年級群の生長, 個体生長, 成熟サイズと年齢, 及び寿命にっいて調査した.同一年級群の生長は, 流程に沿った生息場所によって変異が認められ, 下流ではゆっくりとした生長で, 上流に向うにつれて高生長となる.個体生長に関しても同様の変異の傾向が認められたが, 各個体の生長は同一の生息場所集団の中でも変異に富むことが観察された.初成熟体長は最下流域における52mmから最上流域での72mmへと著しく異なった.一方, 初成熟年齢は2または3年であるが, 上流では3年で成熟する個体の割合が高くなる.また寿命は7~9年と推定されたが, これにも上流に向って高齢化する傾向が認められた.以上の結果から, 本種の雌の生活史は流程に沿って変異し, 低生長の下流では若齢・小型で成熟するのに対して, 上流では生長がよく, 高齢・大型で成熟すると結論された.また, このような雌の生活史変異が繁殖システムとの関係で如何なる意味を有するのかにっいて考察した.

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