魚類学雑誌
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海水飼育したイワナの尾部神経分泌系におけるウロテンシンIおよびIIの免疫組織化学的検出
岡 俊哉本間 義治岩永 敏彦藤田 恒夫
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1990 年 36 巻 4 号 p. 432-438

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抄録

イワナの尾部神経分泌系の役割ないし機能の一端を明らかにするために, 川で釣獲した個体を淡水槽と海水槽に飼育して, ウロテンシンI (UI) およびウロテンシンII (UII) の免疫活性を比較検討した.これらの対照として, 野外で得た個体も使用した.3群間ではことさら取り立てるほどの差異が認められなかったが, いずれの個体でも大半の小型ニューロンにUIとUIIが共存することが確かめられた.一方, 大型ニューロンの一部はUIかUIIのどちらかの抗体のみに反応した.また, どちらにも反応しないニューロンは, ごく少数であった.一般に, 野外ならびに淡水槽で飼育した個体は, 海水槽の個体よりもUIに対する免疫活性が強かったが, 最後者ではUII陽性ニューロンの数が他二者より多い傾向がみられた.なお, 脊髄中心管の腹方に, UIIのみに反応する髄液接触ニューロン系がみられ, 視床下部下垂体神経分泌系や, 尾部神経分泌系とは別の神経分泌系を形成していた.以上の結果は, イワナの浸透圧調整に, ウロテンシンというホルモンが, あまり重要な役割を果していないらしいことを示唆している.

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